改正点:サブリース物件で、家主が入居者に直接家賃請求した場合の入居者の負担範囲が規定された。
サブリース会社に対する家主の懸念事項の一つに、サブリース会社が経営悪化で倒産した場合、家賃の支払いはどうなるかがあるだろう。この点に関する条文として、これまでの民法第613条がある。
この条文中には、家主が建物に実際に住んでいる入居者(以下、実際の入居者)に対し、家賃請求を行った場合、実際の入居者は家主に対して家賃を支払う義務があることが書かれている。
家主と実際の入居者の間には賃貸借契約は結ばれていないが、実際の入居者は、家主所有の建物を利用しているため、法律上の責任が家主に対して生じるという考え方だ。
今回では第613条も改正され、実際の入居者が家主に対して支払う金額の範囲は、サブリース会社が家主に負う債務の範囲が限度と明文化された。
通常、サブリース会社は家賃の10%を手数料として受け取ることが多く、残りの90%が家主への賃料となっている。
だが仮に逆ざやになっている場合、すなわち、実際の入居者がサブリース会社に対して家賃5万円の転貸借契約を結び、サブリース会社が家主に7万円の固定賃料を払う賃貸借契約をした場合、家主はサブリース会社が実際の入居者から得ていた5万円の家賃しか請求できなくなる。
入居者からすればそれ以上支払う理由がないからだ。入居者に請求する際に、必要になる入居者情報をサブリース会社から取得できるかは、サブリース契約の内容次第になる。で合意によって賃貸借契約を解除した場合、家主は実際の入居者にしたときに直接請求されることになる」と話す。
過去には、新築シェアハウスの販売とサブリースを手掛けていたスマートデイズが、2018年に家主に対して家賃支払いを止めた後、破産した。そのようなトラブルに家主が直面した場合、役に立つだろう。
家賃の前だおし入金二重払いになるので注意家主が入居者へ直接家賃を請求した場合、入居者にとって二重払いになるケースがある。それは、入居者が本来の家賃支払い時期よりも前に、たとえば資金繰りに困ったサブリース会社から頼まれるなどして家賃をサブリース会社に払ってしまった場合だ。
ただし実際の入居者が家賃を支払うべき時期にサブリース会社に支払えば、入居者に二重払いさせるのは酷なので、家主に払う必要はないと解されている。その場合は、家主はサブリース会社に請求することになる。
サブリース会社から入居者情報を得られなかった場合、入居者個別に照会状を渡して情報を収集するなど対応することになる。
債務不履行による解約なら入居者の立ち退き要求が可能
サブリース会社の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除した場合、家主は実際の入居者に対して立ち退きを求めることができる。
サブリース会社と実際の入居者が結んだ転貸借契約は、家主とサブリース会社間の賃貸借契約の上に成り立っている契約だからだ。
逆に家主とサブリース会社の間で合意によって賃貸借契約を解除した場合、家主は実際の入居者に対して退去を求めることはできない。家主とサブリース会社が結託して入居者を追い出すようなことがないようにするためだ。
『これならわかる改正民法と不動産賃貸業』の著者で企業法務・事業再生などを手掛ける中島成総合法律事務所(東京都中央区)の中島成弁護士は「家主が実際の入居者に対して直接家賃請求することは、サブリース契約を解除していなくてもできる。
ただし実際には入居者からの家賃がサブリース会社の手に一回渡ってしまったら、家主のもとに家賃が入らないと考えられるくらい、信用が悪化したときに直接請求されることになる」と話す。
過去には、新築シェアハウスの販売とサブリースを手掛けていたスマートデイズが、2018年に家主に対して家賃支払いを止めた後、破産した。そのようなトラブルに家主が直面した場合、役に立つだろう。
家賃の前だおし入金二重払いになるので注意
家主が入居者へ直接家賃を請求した場合、入居者にとって二重払いになるケースがある。それは、入居者が本来の家賃支払い時期よりも前に、たとえば資金繰りに困ったサブリース会社から頼まれるなどして家賃をサブリース会社に払ってしまった場合だ。
ただし実際の入居者が家賃を支払うべき時期にサブリース会社に支払えば、入居者に二重払いさせるのは酷なので、家主に払う必要はないと解されている。その場合は、家主はサブリース会社に請求することになる。
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