NGその1:怒鳴りつけ、せかす 担当者を高圧系家主
管理会社の担当者はトラブル対応の際、特に家主と入居者との板挟みになりやすい。その立場を理解することなく「ミスをしたな」「さっさと働け」と高圧的な言動はNGだ。
ケース1管理会社の報告が遅れた
Good:ミスを責めずに話を聞く担当者を委縮させない
修繕工事が完了したのに完了報告・精算が遅れた。あるいはエアコン発注で通常の価格よりも割高な業者へ依頼してしまった。賃貸経営の現場では、管理会社によるこういったミスが発生する。
そのような場合に「何をやっているんだ。しっかり仕事をしろ」と頭ごなしに叱りつけることをしていないだろうか。「全てはオーナーの責任でありミスであるという姿勢を見せます」と話すのは宮城裕オーナー(沖縄県浦添市)だ。 「入居者へ直接的な被害のないミスであることが前提です。なんでも笑って許すわけではありません。ですが、ミスを責めることで
『この人にバレたら怒られる』と担当者が萎縮したら、次に別のミスが起きた時に隠匿しようとします」。現場からすぐに報告を上げてもらうためには怒りを前面に出さないことが、家主にとって必要な姿勢という思いだ。
提案についても同様のことがいえる。以前、すぐに入居があった物件について「家賃をアップして募集してみてはどうか」と担当者から提案。
結果として入居付けができずに元の家賃に戻したことで成約した場合でも「余計な提案をしたから」などと言うことは絶対に言わない。「値上げの根拠を明らかにして
もらったうえで家主自身が受け入れたのであれば、その失敗の責任はやはり提案を受け入れた家主側にあります。そうでなければ、家主と管理会社の関係性は続けていけない」と話す。
宮城オーナーは過去に管理会社に勤めていた経験から、複数の物件を抱える担当者は全てのオーナーを平等に扱うことができないことを知っている。その経験も管理会社との付き合い方に生かされている。「会社としては戸数の多い家主を優遇するでしょう。です
が、いち人間としてはやはり家主の人間性を見ます。承認欲求のようなもので、『同じ目的に向かっているパートナー』として認めてもらえる相手と共に仕事をするのと『管理費を払っているのだから』と言われて動くのとはまったく違った仕事となるでしょう」
賃貸業界に入ったばかりの新人であれば「家主が育てる」心持で接する。こうして関係性を構築した過去の担当者が、今では管理会社を立ち上げ、社長となって宮城オーナーといい付き合いを続けている例もあるそうだ。
ケース2設備でクレーム
Good:入居者側に立ってもらう スムーズな管理につなげる
「管理会社の担当者には、クレームが出た際、入居者の味方という立ち位置でいてもらっています」。そう話すのは松田英明オーナー(大阪府箕面市)だ。
管理会社の担当者も、クッション材のような立場の家主がいることで、トラブル時の対応のやりとりの中で、入居者との円滑なコミュニケーションが進むという。最初は小さいクレームでも、やりとりが滞ることで大きなクレームになってしまう。
それを未然に防ぐことができ、結果として管理もスムーズになるそうだ。「管理会社はトラブルへの対応だけでなく、日頃から小さな困りごとなど、積極的に入居者からの連絡に対応してもらっています。
その結果、管理会社と入居者との関係がよくなり『現地管理担当』のような自主的に共用部の汚れや不備を知らせてくれる入居者が出てきてくれるそうです。ますます管理業務が円滑に進む、と感謝されています」(松田オーナー) 設備故障などの費用に関しても「家主にはこれだけ泣いてもらいますので、入居者さまにもこれだけの負担をお願いします」といった交渉をしてもらうと、入居者からの納得も得やすい。
家主自身が「管理会社には入居者の味方になってほしい」とあえて要望を伝えることで、管理会社側も、ノウハウではなく真の入居者目線からの管理を行うことができる。これが松田オーナーは長期入居者獲得につながっていると考える。