不動産鑑定士フジミヤのまるっと相続塾

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マンション敷地と駐車場を一体評価して相続税還付! 

 相続を専門に学べるまるっと相続塾の塾長。相続税土地評価のプロとして、創立29年間で7,700件もの相続税減額に携わってきた経験をもとに解説する。賃貸マンションの敷地と駐車場については、契約関係等を確認し、一体評価すべきかを判断することを教えている。

 今回は相続税還付の事例です。神奈川県Y市にお住まいの滝川様は、2年前、お父さまを亡くされ、現金、預貯金、有価証券のほか、自宅不動産や賃貸マンションなどを相続されました。 

 相続税の支払いでは、現金が足りなかったため、不動産をいくつか売却して納められたとのこと。その際、売却を仲介した不動産会社から当グループを紹介され、「少しでもお金が戻ってくるのであれば」と相続税の見直しをおまかせいただけることになりました。 滝川様のご自宅に伺って相続税申告書等の資料を拝見すると、さっそく気になる点を見つけました。

 滝川様が相続された賃貸マンション(甲建物)は、1階が店舗、2階と3階が居宅として利用されています。賃貸マンションの敷地(A土地)に隣接する形で駐車場(B土地)が設けられており、賃貸契約書を見ると、B土地は、賃貸マンションの入居者および店舗利用者の専用駐車場となっていました。

 申告時における資料では、A土地とB土地は別個の土地として評価されており、後述の理由から減額可能性を感じた私たちは、資料をお預かりし、事務所で一度、検証を行うことにしたのです。

賃貸不動産の敷地は貸家建付地として評価 

 A土地のように、地主がその土地上に自己名義の建物を建て、その建物を第三者に賃貸している場合、そのような土地は相続税評価上、「貸家建付地」と呼ばれます。

 貸家建付地を評価するときは、その土地を更地として評価した価額から、借地事情が似ている地域ごとに定められる「借地権割合」や、借家人の使用収益権の大きさを表示する「借家権割合」、賃貸不動産における「各独立部分」(※1)の賃貸の状況により定められる「賃貸割合」を考慮した金額を控除することができます。

 例えば、評価対象地が借地権割合60%の地域にあり、その上に立つ賃貸物件が満室の場合には、更地の場合と比べて評価額が2割ほど、下がります。このような節税効果が見込めることなどから、アパート建築は、特に地主の間では、人気の相続税対策のひとつとなっています。

 隣接する賃貸住宅の入居者用駐車場は一体評価

賃貸不動産の建築に際して、利用者のために専用駐車場が併設されるケースがありますが、この場合、次の点に注意が必要です。 

 つまり、月極駐車場等、貸駐車場の用に供されている土地は、「自用地」として評価することが原則です。

 しかし、当該貸駐車場が賃貸不動産と接続していて、駐車場の利用者が賃貸不動産の利用者のみで構成されている場合、駐車場の貸し付けの状況は、賃貸不動産の賃貸借と事実上、一体のものであると考えられるため、この場合は賃貸不動産の敷地と駐車場をひとつの土地と考えて、全体を「貸家建付地」として評価して差し支えないとされている点です。 

 これを今回のケースにあてはめると、B土地は、甲建物の利用者の専用駐車場として利用されていることから、A土地と一体の土地(C土地)として、貸家建付地評価を適用できるものと考えられます。

 さらに、A土地とB土地を一体で評価できるようになったことで、東京、大阪、名古屋など三大都市圏に評価対象地がある場合で、面積が500㎡以上あることなどが要件とされる「地積規模の大きな宅地」に該当する可能性も出てきました。

ほかにも、相続開始時点で埋蔵文化財が存在することが確実とされる土地に適用される「埋蔵文化財包蔵地の評価」などを併用できる可能性があることもわかりました。

 以上の減額要素をまとめた意見書を税務署に提出したところ、問題なく認められ、約900万円もの相続税が戻ることになり、滝川様にはお喜びいただくことができたのです。

 貸駐車場が賃貸不動産と接続していて、当該駐車場の利用者が賃貸不動産の利用者のみで構成されている場合、賃貸不動産の敷地と駐車場をひとつの土地と考えて、全体を「貸家建付地」として差し支えないとされる。

今回のポイント

貸駐車場が賃貸不動産と接続していて、当該駐車場の利用者が賃貸不動産の利用者のみで構成されている場合、賃貸不動産の敷地と駐車場を一つの土地と考えて、全体を「貸家建付地」として差し支えないとされる。

「相続税還付手続き」

「相続税還付手続き」とは、相続税の申告期限から5年以内であれば、徹底的に土地評価等の見直しを行うことにより、納め過ぎていた相続税の減額・還付を受けられる手続きです。

 土地の評価額を
①相続専門税理士としての観点から
②不動産鑑定士の観点から
さらに、場合によっては
③土地家屋調査士の測量という観点から
見直すことで、納税者に最も有利かつ適正な評価額を算出します。

 

フジ総合グループ《フジ相続税理士法人・株式会社フジ総合鑑定》(新宿区・名古屋市・大阪市)
代表 藤宮 浩(不動産鑑定士)
年間950件以上の相続関連案件の土地評価に携わる。相続税還付業務の第一人者として各地での講演を多数行うほか、各種媒体への出演、寄稿多数。

不動産鑑定士藤宮先生

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