不動産所得の節税ポイント

毎年年末が近づくと焦り始めるのは確定申告の準備だろう。必要経費として計上できる項目が決まっているため、節税も大したことはできないと思われがちだが、実は違う。確定申告の仕組みとメリットを理解することで、より節税効果を得られるのだ。さらに2020年にはコロナ禍や税制改正もあった。20年21年度おの確定申告時に気を付けておきたい税制ポイントも紹介する。

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節税の基本は青色申告

電子申告で受けられる65万円の特別控除

 2020年から青色申告特別控除額が変更される。18年度の税制改正で青色申告における65万円の特別控除の要件が見直された。20年分の確定申告から、従来の要件に加えて『e─Tax(イータックス)』による電子申請か、または仕訳帳および総勘定元帳を会計ソフトなど使用した電子帳簿で保存をしている場合にのみ、65万円の控除が受けられるようになった。

 電子申請または電子帳簿保存以外の方法で申告書類を提出する場合は、10万円減額となった55万円が控除額になるため注意が必要だ。 だが、合計所得金額が2400万円以下だった場合は、基礎控除額が38万円から

 48万円に10万円引き上げられたため、電子申請または電子帳簿保存以外の方法で申告したとしても控除額は今までと変わらない。なお、10万円控除のほうは変更がない。節税を意識するならば、『e─Tax』での申請を考えたほうがよいだろう。

確定申告をおさらいしよう

 確定申告には、白色申告と青色申告の2種類の申告方法がある。申告をする年の3月15日までに『青色申告承認申請書』を税務署に届け出て受理されたら青色申告になり、届け出を行わなかった場合は白色申告になる。 青色申告も白色申告も、帳簿付けの手間は変わらない。だが、青色申告にすることで10万円の特別控除が受けられるほか、さまざまなメリットがある。 特に、「複式簿記」形式で税務管理を行い、賃借対照表や損益計算書を

『青色申告決算書』として申告書類に添付し、かつ不動産所得の場合に「事業的規模」と認められたケースでは、特別控除が10万円から65万円になる。

 青色申告には意外と知られていない基準などがある。また税制改正などにより20年の確定申告から気を付けたいことがあるため、Q&A形式で解説しよう。

Q 事業的規模の判断基準は?
A 5棟10室以外でも認められる

P36でも触れたが、55万円または65万円の特別控除を受けるためには、税務署から「事業的規模」であると認められる必要がある。

 国税庁のホームページを参照すると「事業的規模」の形式的な基準として、アパートなど貸与可能な独立した室数がおおむね10室以上であること、または貸家などの場合おおむね5棟以上であることが目安といわれている(同庁のタックスアンサーNo.1373を参照)。貸室2室で貸家1棟に換算可能な計算だ。

 だが国税庁によると「…原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します…」

(同)ともあり、「事業的規模」には明確な定義づけがされていないのが現状だ。そのため、税務署は実質的な基準で判断する場合がある。

 税理士法人YFP(ワイエフピー)クレア(東京都新宿区)の冨田将行税理士は「形式基準に満たなくても事業的規模と判断された事例がある」と語る。同法人によると過去に、約150万円の年金収入しかなく、テナント経営により4室程度で年間800万円の高額賃料だったケースでは事業的規模と認められたという。

 また共有不動産を所有していた場合は、持ち分ではなく物件全体の室数で判断される。そのため、兄弟で1棟16室のマンションを共同所有していた場合、兄弟それぞれが、1棟16室を所有しているとみなされ、2人とも事業的規模として申告可能だ。

Q「事業的規模」の対象は賃貸住宅のみ?
A 駐車場も対象になる

  駐車場を経営している場合は、5台を停められる駐車場を1室と換算することが可能だ。賃貸住宅を保有していなくとも、50台以上を停められる駐車場を所有している場合や、賃貸住宅と駐車場の両方を保有している場合は合算して事業的規模にできないかを、税務署や税理士に相談するのもよいだろう。 

 また、所有物件をレンタルスペースとして活用していたり、物件を借りて転貸して時間貸ししていたりする場合も「土地や建物などの不動産の貸し付け」に該当するため、不動産所得に分類される。賃貸住宅と貸し会議室などを経営している場合も、申告内容を見直してみるのがよいだろう。

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