家主の賢いキャッシュフロー改善(第2回)
事業計画表で手残がなくなる将来を把握
今回は所得計算とキャッシュフローの考え方について説明します。前回も伝えましたが、事業計画表とは、将来の売り上げや経費、収支を予測し計画表に落とし込んだものです。
キャッシュフロー計算の下から2段目、手残りの数字の推移に着目してもらいたいのです。
事業計画では収入は一定にしています。さらに経費(諸経費)も一定にしているのです。賃貸経営で満室を維持していても右肩下がりなのです。 なぜか? この構造を知ることが賃貸経営においては非常に重要です。

理由は二つあります。まず一つは、借入金の利息。借入金利息は、年々減っています。元本を返済していっているから当然でしょう。利息は経費になります。経費が少なくなることから税金が年々上がることになります。これは元利均等返済で返済しているからです。
元利均等返済は、元本と利息を一定にする返済方法。大抵の家主は、返済額を抑えるために元利均等返済にしています。つまり、税金増加分だけ支出は増えるため、手残りは、毎年毎年減ることになります。
二つ目は、減価償却費です。定額法は、減価償却費が一定になります。定率法は年々逓減するのが特徴です。1998年4月以後に取得する建物、2016年4月以後に取得する附属設備や構築物は、全て定額法に統一されてしまいましたので、減価償却は一定になります。
しかし、本体と附属設備に分けて、附属設備を15年などと短く償却していることが多いと思います。15年目にぱったりと附属設備の減価償却がなくなるのです。すると一気に税金が跳ね上がります。18年目で手残りがマイナスになっているのは、減価償却がなくなって税金が上がったからです。
手残りは右肩下がりと理解する
ここから賃貸経営は始まる
借り入れをして、賃貸経営をするということは、利息が年々減ることで税金が上がり、手残りが少なくなることをしっかりと理解をしなければなりません。一方、家賃収入は、毎年下がらなくても、上がることは余程のことがない限りありえません。
賃貸住宅が供給過剰で、なおかつ、人口減少が続いている状況では、家賃の値上げは到底期待できないからです。一度下がった家賃は、部屋のリフォームやリノベーションをして、一時的に上がったとしても、時間が経てば、やはり下がるのです。
その原理原則は変えられないのです。つまり、賃貸経営は、他の事業のように年々売り上げや手残りが増えるものではない。むしろ、「手残りは右肩下がりのビジネスモデル」なのだと考えてます。そこからキャッシュフロー改善が始まるのです。
賃貸経営で失敗する大きな原因は、今のキャッシュフローが永遠に続くという錯覚をしてしまい、お金の無駄遣いをしてしまうことです。 「今のキャッシュフローがピーク」。そう思うと、改善するという行動に移れるからです。そして、それは今すぐやる必要があることがわかるからです。
[20年7月号(vol.118)P77に掲載:連載中]
解説
渡邊浩滋氏(大家さん専門税理士)
渡邉浩滋総合事務所(東京都千代田区)
大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。
法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(全86室)が危機的状況であることが発覚し、経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機から脱出。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。18年大家さん専門税理士ネットワーク『Knees bee(ニーズビー)』を設立。大家さん専門税理士のフランチャイズ展開で全国の家主を救うべく活動中。『賃貸住宅フェア』など講演も多数経験。
