オーストラリア・ブリスベンの不動産事情
五輪開催決定で流入増加
ブリスベンは、オーストラリアで人口第3位の都市です。約270万人の人口を擁し、近隣のゴールドコーストとサンシャインコーストを合わせると、350万人を超えます。
冬でも暖かい亜熱帯気候で、台風や山火事のリスクもなく、物価や住居のコストが適度に安いブリスベンの住みやすさは、オーストラリア国内では以前から知られていました。この街が国際的知名度を持つようになったのは、2021年にIOC(国際オリンピック委員会)により32年夏季五輪・パラリンピックの開催都市に選ばれたのがきっかけです。
折しも、新型コロナウイルスの感染拡大による被害がメルボルンやシドニーほど深刻でなかったブリスベンに移り住む人が増えていたタイミングでした。五輪開催が決まると世界中の投資家が注目し、ワールドマネーが流入しました。五輪開催決定の翌22年には、コロナ下で適用されていた海外からオーストラリアへの入国制限が撤廃され、移民や留学生が一気に増加。コロナの反動もあって史上空前の流入数となりました。
コロナ禍前より価格60%高
海外からの移住者は、必ず住宅を必要とします。ブリスベンの賃貸空室率は1%を切り、家賃はうなぎ上りで、不動産価格は急騰。人口がおよそ2倍のメルボルンの水準を、瞬く間に追い抜いてしまいました。戸建てとマンションを合わせた住宅全般の価格中央値は87万ドルを超え、シドニーに次いで国内第2位になりました。コロナ禍前と比べると60%ほど上がった計算になります。
ブリスベンの不動産価値が上がった理由は、交通システムを含めた都市開発の成功が寄与した面も大きいとされます。ブリスベン都心と近郊を結ぶBRT (バス・ラピッド・トランジット:バスを基幹とする交通システム)が整備され、多数のバスが専用軌道をひっきりなしに往来。定時性も高く、市民の移動を支えています。
伸びしろある地区が狙い目
ブリスベンはここ3年ほどの間に急激に不動産価格が上がったため、価格の伸び率は地域ごとにムラがあります。ほかの似たような地区と比べて不動産価格がまだ上がり切っていない場所を狙えば、今からでも参入する妙味は十分あります。
最後に、ブリスベン周辺には住宅開発関連の規制が緩い自治体がいくつかあり、日本でいう「一棟アパート」の類いが建てやすく、投資しやすい面もあります。購入して損はないでしょう。
PROFILE
アジア太平洋大家の会 代表 鈴木 学
海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2024年11月号掲載)
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