相手によって変わる不動産の残し方
売却を視野に入れることも考える
不動産だからこそのトラブル
皆さまこんにちは。心理カウンセラーの佐藤栄子です。
この記事を読んでいる人の保有資産は、もちろん不動産関係のものが多いでしょう。不動産を保有することは相続税などの節税にも適しているため、仕事が不動産業界関連ではなくても、資産形成にさまざまなメリットをもたらすのは事実です。
しかし最近、相続財産に不動産が多いため起こった相続のトラブル事例が増えています。遺言書に所有不動産の相続人がそれぞれ明記されていても、その実勢価格を考慮すると不平等であると主張する遺族がいたり、相続しても不動産の管理ができず放置されていたりなど内容はいろいろです。
いずれもトラブルの発端が「不動産という財産を平等に分けるのはかなり難しい」「相続人が不動産事業に興味・理解があるとは限らない」の二つに起因していると感じます。
臨機応変な対応が必要
不動産業界は土地・建物を介して、ほぼすべての業種・業態の会社や団体と関わりを持つことができます。 また扱う金額が大きいため、計画的なリスク管理が必要です。個々の業務は委託できても、最終的にはすべての事案を把握し、自身でのマネジメントが求められます。
不動産で財を成した人たちは、そういった才覚に恵まれたうえに苦労して取得した、あるいは親から引き継いで大切に保有物件を守ってきたのでしょう。できれば後世までずっと残してほしいと願うのは当然だと思います。
ただ、その思いがトラブルを長引かせてしまう事態も起こります。ある相談の事例で、そんなにもめるならいったん不動産を全員で相続してから売却して、それぞれに現金で分ければ丸く収まるのではといった提案に「不動産は引き継いでと遺言に書いてあるから遺志は尊重すべき」と言う遺族もいて、結局係争に発展したケースもありました。
「土地を押さえる者が富を得る」といわれているのはそのとおりですが、これだけが正解ではなくなってきています。 不動産を残す場合、その保持が相続人にとって何らかの負担になるようであれば、残念ですが売却もやむを得ないという覚悟も必要かもしれません。
子孫が末永く繁栄していくための財産、どのように引き継ぐのがベストか家族と話してみてはいかがでしょうか。
佐藤 栄子

[プロフィール] 不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。
(2025年2月号掲載)