区分所有から段階的に事業拡大
経験を生かして不動産会社も経営
水落寛オーナー(新潟市)が賃貸経営を始めたきっかけは、2008年のリーマン・ショックだった。当時サラリーマンだった水落オーナーは、給与所得が減少。自分の力で収入を得る手段として賃貸経営を始めた。
水落寛オーナー(53)(新潟市)

09年に最初の不動産として、手持ちの現金で区分マンションを購入。一方で、10年には融資を受けて中古アパート1棟を購入した。ここから毎年1棟のペースで所有物件を増やしていく。
賃貸経営が軌道に乗ったことと、一つの契約で複数戸が手に入る効率の良さに気付いたことにより、徐々に区分から一棟ものへと投資対象を移していった。
中古で購入したRC造の1棟を除き、所有する物件のほとんどは木造だ。固定資産税の安さやリフォーム費用などを踏まえ、キャッシュフローを重視した結果、木造を選んできた。
中古でも新築物件での経験を生かしながら事業拡大中
中古物件に関しては、管理が行き届いていない物件を購入してリフォームし、家賃を上げることで収益を増やす戦略を取ってきた。
一方で、20年には新潟県三条市に初の新築2棟を建設。新築物件を手がけるようになり、リフォームの際にも流行を取り入れられるようになったという。
一例として、新築に多い照明を築30年超えのアパートに取り入れた。IoT照明で、スマートフォンからの操作できる上、明るさや色も調整できる。
「ほかの築30年や35年の木造アパートには、このような設備はありません。費用はかかりますが、周囲との差別化になり、賃料を上げることができるのです」(水落オーナー)
新築物件を意識したリフォームにより、水落オーナーの物件では95%前後の入居率を維持している。また購入当時に比べると、すべての物件で家賃が上がっているという。
現在、所有物件は11棟の集合住宅に3戸の戸建てを合わせ、計86戸ある。所有物件の平均利回りは10%前後だ。24年の新築物件では建築費の高騰もあり7%程度だが、中古物件で高い利回りを実現している。
水落オーナーは「小さく始めて徐々に拡大していったのが良かったのだと思います」と振り返る。今後は、新築や築浅のRC造物件にも挑戦したいという。

▲新築した物件の外観
自身の経験を生かした投資塾 仲介・管理も開業しサポート
水落オーナーは、自身の賃貸経営を拡大する傍ら、19年に「新潟不動産投資塾」の代表、24年からは「新潟大家の会」の会長に就任。20年には社会保険労務士として開業し、23年には不動産会社を興すなど、複数の活動を行っている。
また、生活保護受給者らに向けた住宅あっせん事業を始め、戸建て物件を紹介する機会が増えた。塾生にこの事業を通した経営を紹介するにあたり、自分でも戸建て物件を経営し始めたという。
ほかの事業とも関わり合いながら、水落オーナーは賃貸経営をまだまだ拡大させていく予定だ。
(2025年 4月号掲載)