【連載】教えて! 弁護士さん 賃貸経営お悩み相談:広告料

コラム賃貸経営お悩み相談

賃貸経営に関する法律のポイントをQ&A形式で解説します。

Q.不動産会社に広告料を支払っています。仲介手数料とは別に支払う必要はある?

私はアパートの入居者の仲介を不動産会社に依頼しています。不動産会社に支払う仲介手数料は、入居者から事前に承諾を得たうえで家賃の1.1カ月分を入居者に全額負担してもらっています。その訳は、別途私がそれなりの広告料を支払う代わりに店先にチラシを張ってもらっているからです。しかし、そもそも広告料は支払う必要があるものなのですか?

A.広告の料金に相当する額であれば違法性はない。ただし「仲介手数料に含まれている」という裁判例も

 私たちが生活の中で取引している物やサービスの価格は、取引の当事者(ラーメン店の例だと、お店とお客)が互いに納得・合意して決定されます。互いが納得・合意していれば、価格が高くても安くても原則として価格に制限はないということになります。(契約自由の原則)
 しかし、物やサービスの価格が高くなり過ぎる場合には生活に悪影響が発生してしまう可能性があるため、価格の上限が定められている分野があります。その一つが不動産取引です。質問に出てくる不動産会社は「オーナーのために入居者を探すサービス」と「入居者のために新居を探すサービス」を提供しているので(賃貸仲介業務)、仲介手数料をもらえることになります。そこで宅地建物取引業法(宅建業法)により、仲介手数料には以下のようなルールが定められています。(宅建業法第46条、昭和45年建設省告示第1552号の第4)
●賃貸人及び賃借人の双方からもらえる仲介手数料の額(税込)の合計額は、家賃(税抜)の1・1カ月分以内
●居住用建物に関して賃貸人又は賃借人の一方から受けることのできる仲介手数料の額は、事前に依頼者の承諾を得ている場合を除き、家賃の0.55倍以内
 一方で、不動産会社は、仲介手数料とは別に「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」をもらうこともできます。(同建設省告示第11①)
そうすると、質問に出てくる不動産会社は宅建業法のルールどおりに仲介手数料や広告料をもらっているように見えますが、裁判所は「通常必要とされる程度の広告宣伝費用は、営業経費として仲介手数料に含まれている」(東京高判昭和57年9月28日判時1058号70頁)と判断しているので、店先にチラシを貼ってもらっているだけの場合には、仲介手数料とは別に広告料を支払う必要はないのかもしれません。広告料が不当だと感じるときは、専門家に相談してみてください。

今回のポイント
●「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」であれば支払うことに問題はない
●店先にチラシを張るだけの場合には支払う必要はない可能性も

 

私たちが答えます
TMI総合法律事務所(東京都港区)

野間敬和弁護士:1995年、同志社大学大学院法学研究科修了。97年、弁護士登録。2003年、バージニア大学ロースクール修了。04年、ニューヨーク州弁護士資格取得。同年、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)に出向。08 ~11年、筑波大学大学院ビジネス科学研究科講師、12年、証券・金融商品あっせん相談センターあっせん委員。11~14年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官。

辻村慶太弁護士:2014年、一橋大学法科大学院修了、15年に弁護士登録。

(2025年6月号掲載)

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