全国の家主の会に聞く‘25繁忙期総括

賃貸経営トレンド家主の会

全国の家主の会に聞いた2025年繁忙期総括②

全国の家主の会メンバーに聞く

繁忙期動向と地域市況

北海道:道内でも地域により大きな差

北海道大家塾
原田哲也オーナー(札幌市)

千歳市での半導体工場建設に伴い、周辺地域では賃料が上がっています。私は札幌市の物件でも賃料を上げて募集し、無事に入居が決まりました。一方、旭川地域は苦戦しているようで、低い賃料で敷金・礼金なし、フリーレント付きの募集も見かけます。

北陸:例年に比べ入退去は鈍化

福井大家塾
杉田佳信オーナー(福井県坂井市)

新幹線建設の特需が終わり、建設地域では1LDKの単身向け物件が飽和状態のようです。

新潟大家の会
水落寛オーナー(新潟市)

新潟大学近くの学生向け物件の動きは順調でしたが、新潟市内を含む社会人向けは引っ越しの数が減り、入れ替えが少なくなった印象があります。

関東:東京中心に家賃値上げの傾向

いばら喜大家の会
柴山修オーナー(茨城県つくば市)

入居者の動きは例年とさほど変わっていません。つくば市周辺は物件も家賃もすっかり高騰しています。水戸市や隣県の栃木県には、東京都心からの値上げの波は届いていませんね。

エレガントオーナーズ
五十嵐未帆オーナー(川崎市)

会員に向けてアンケートを行いました。1都3県以外の物件を持つオーナーもいますが、有効な回答のうち、退去数に関しては27人中15人が「例年より退去が少なかった」と回答。入居付けについて、25人中11人が「入居付けは順調だった」という回答でした。

駆け出し大家の会
平野方史オーナー(東京都大田区)

神奈川県を中心に物件を所有しています。退去数は例年どおりですが、空室が出ると家賃を上げて募集してもすぐに次の入居が決まる印象がありました。

田嶋章克オーナー(埼玉県滑川町)

所有物件には築古戸建てが多く、長期入居ばかりですが今年は10件ほどの退去がありました。都内の物件は1万円、埼玉県の物件は3千円の家賃値上げで募集しましたが、すぐに決まっています。東京都葛飾区の戸建てでは、周辺に観光地があるわけではないのですが、民泊事業者からの引き合いがあり2万円の賃料上げに成功しました。

東京マンションオーナーズ
依田泰典オーナー(東京都世田谷区)

都心の区分マンションは、総じて新規募集の際の値上げに成功しています。投資用の区分マンションでは、管理が行き届いていれば何もせずとも賃料が上がる状態が続くでしょう。

行動する大家さんの会
廣田裕司オーナー(東京都千代田区)

入退去が少なく、空室も少ないため仲介事業者も苦労しているようでした。神奈川県の湘南台エリアで退去のあった物件では、退去日に引き合いがあり、5万円台から2千円ほど賃料を上乗せで決まりました。

東京調布大家の会
海野真也オーナー(東京都調布市)

都内のほか、京都と福岡に物件を所有しています。福岡の物件では仲介事業者主導で800円の値上げで募集。東京都日野市の物件ではリノベーションを行い、2000円の家賃値上げで募集しました。

東海:地域による差が顕著

成長する大家の会
松久保正義オーナー(愛知県半田市)

名古屋市内に単身者向けの投資用アパートが乱立し、市場で余っています。ファミリー向け物件は値上げに成功しているようです

東海大家の会
加藤至貴オーナー(名古屋市)

自動車工場の実需がある地域を中心に、例年より入居者の動きが多く、新型コロナウイルス下と比べて景気が良くなっている印象です。

大家になる会
成田勉オーナー(名古屋市)

解約や新規契約は例年より多い印象でした。入居者の意図としては、高額な固定費となる家賃の出費を減らそうとしているのかもしれません。空室が出やすく、部屋が空いても埋まりにくくなりました。岐阜県では、特に供給過多で需要とのバランスが崩れている印象を受けます。

近畿:入退去分散する傾向が強まる

おおや倶楽部(大阪市生野共同住宅組合)
糸川康雄オーナー(大阪市)

春に新入社員のための法人契約を行うような企業が減っていますね。一昔前のような繁忙期らしさは年々なくなってきています。

がんばる家主の会
松浦昭オーナー(堺市)

例年この時期の退去は少なく、退去した部屋でも4000円家賃を上げて募集することができました。当会会員の原健司オーナー(兵庫県尼崎市)、樋口雅也オーナー(大阪府寝屋川市)も退去のあった部屋の家賃を値上げして募集し、コロナ前の価格帯に戻そうと動いています。需要が高まっているこのタイミングで、家賃値上げを考えなければならないと感じており、当会でもそのように話し合っています。

関西大家の会
松田ひであきオーナー(大阪府箕面市)

大阪府内の1棟で元の家賃の4%、札幌市の4棟で2~3%、更新時期に関係なく一斉値上げを行いました。値上げした物件は新築や築浅のファミリー向け物件です。特に問題なく応じてもらえました。

ドリーム家主倶楽部
加藤薫オーナー(兵庫県伊丹市)

所有物件にはファミリー向けの間取りが多く、入居者に頻繁に転勤する人やや学生は少ないです。そのため、例年繁忙期が特に忙しいわけではなく、25年も同様です。

中国:入退去は少なく時期が分散

岡山大家塾
星島淳人オーナー(岡山市)

岡山県と香川県に物件を所有しています。例年に比べ、繁忙期の入退去は少ないです。年末までの退去や5月の退去予定もあるため、分散している印象です。

福山大家の会
豊田裕之オーナー(広島県福山市)

例年に比べ入退去に動きが少なかったです。県内の新築の単身者向けマンションが家賃を高く設定していますが、なかなか埋まらないようです。

九州:賃貸事業にも人口集中の影響

九州大家の会
小場三代オーナー(福岡市)

市場の家賃は数百円から数千円の少額でじわじわ上がっています。引っ越せば家賃が上がる状況のためか、入退去の動きは少なかったです。福岡は商圏が小さく、博多―天神間ではリフォーム次第で家賃の2倍近い値上げができましたが、そのほかの地域ではなかなか難しいです。

南九州鹿児島宮崎大家の会
竹下憲治オーナー(鹿児島市)

鹿児島県全体で公務員や金融機関職員の県内異動が少なく、繁忙期の動きは少なめでした。大企業の多くは福岡県に支社を置き、そこから鹿児島県を担当するため、人口流入が少ないようです。

沖縄:リゾート開発の影響が大きい

宮城裕オーナー(沖縄県浦添市)

石垣島や宮古島は、都内よりも相場家賃が高い状態です。また名護市では、テーマパーク建設の影響で大学の新入生が部屋を見つけられないほど賃貸住宅需要が高まっています。全体的に値上げ基調ではありますが、同時に増え続けていた人口の減少が始まりました。安易な値上げに走らず、長期入居者を確保していくべき局面だと感じています。

(2025年7月号掲載)
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