お宝の中でも奥が深い「絵画」

相続相続財産の評価額

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絵画

 絵画は画家の知名度、作品の年代や希少性、保存状態、市場での需要と供給のバランスなど、さまざまな要素によって評価が決まる。お宝の中でも奥が深く、鑑定には専門的な知識と経験が特に必要な領域だ。

 「不動産には一つの土地に対して四つの異なる価格があることを指す『一物四価』という用語がありますが、絵画にも同じことがいえます。美術情報誌、百貨店、画廊、オークションでは、同じ絵でも値段が違うのです。このうち、当社が指標にしているのは、オークションでの取引価格です」と語るのは、遺品整理などを手がける翔陽(横浜市)の前川和満社長だ。

査定で重視される海外人気

 アート市場においては、アメリカとイギリスで落札される割合が60〜70%だ。次に多いのが中国で、日本は1%にも満たない。そのため査定の基準は「海外で人気があるかどうか」になる。日本画家では第2次世界大戦前、横山大観と竹内栖鳳が二大巨匠といわれて人気があったが、生活様式が変わったこともあり、和室に合う日本画や水墨画の需要は下降気味だ。

 現在、日本人作家で人気があるのは草間彌生だ。また奈良美智や村上隆、若手なら名和晃平、KYNE(キネ)、ロッカクアヤコも人気だという。

▲︎草間彌生は世界市場で人気のある画家の一人だ


 最近、前川社長が税理士の紹介で鑑定した絵画は、バブル期に百貨店で500万円で購入されたものだった。通常、絵画は必ず現物を見て鑑定するが、依頼主が遠方に住んでいたため、まずは写真を預かり鑑定した。「きっと今はすごい価格になっているはず」と依頼主から言われていたものの、鑑定結果は10万円であった。

 絵画の価格はオークションの結果が反映されやすく、2〜3カ月単位で変化する。またリーマン・ショックのような経済危機に襲われたら、相場は大きく下がる。購入時の値段が維持されるとは限らないのだ。

 査定においてもう一つ重要な点は原画かどうかだ。人気のある作家のものであっても、原画と複製画では価格が大きく異なる。「2005年に入って査定したのは、藤田嗣治(レオナール・フジタ)のペン画です。原画だったので、数百万円の高額で買い取りました」(前川社長)を明らかにすることであり、査定とは鑑定結果に基づき買い取り価格を算出する行為だ。そのため、査定額は買い取り手により異なる。少しでも高値で売りたい場合は、複数社に査定してもらったほうがいい。値段に関係なく、作品への愛情や次世代への引き継ぎを大切にしたいということであれば、長年懇意にしている骨董こっとう
・美術商などに任せるという選択もあるだろう。

お話を聞いた鑑定のプロ

翔陽(横浜市)
前川和満社長

鑑定歴16年。金融機関や税理士などの士業と協業し、年間20万〜30万点の鑑定をしている。一般社団法人全国遺品整理業協会の理事でもある。

■会社情報
グループ法人を含めて全国で10拠点を展開。遺品整理、相続・終活コンサルティング、総合買い取りを手がける。

(2025年 8月号掲載)

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