【特集】猫と暮らすシェアハウス

賃貸経営空室対策

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入居前から猫がいるシェアハウス 20頭が入居者と共に卒業

 藤堂薫社長は、経営する不動産管理会社リビングゴールド(東京都杉並区)にて、猫がいるシェアハウス「リビングキャッツ」を運営している。
 10年前に保護猫団体と知り合い、保護猫の行き先に対して住宅と密接した形で何かできないかと相談を受けたのがきっかけだ。いったん、藤堂社長が飼い主になって保護猫をシェアハウスに引き取り、そこに入居者を募集する。退去時に「猫を連れていきたい」という申し出があれば、猫も「卒業」として入居者と共にシェアハウスを出る。今までに20頭の猫が卒業していったという。

リビングゴールド(東京都杉並区)
藤堂薫社長


 10年前に同社の営業所がある荻窪で最初のシェアハウス事業を開始。現在は場所を移し、居室5戸に猫5頭、4戸に5頭の2棟のシェアハウスを運営している。

 「猫を飼いたいけれど1人では自信がないとか、アレルギーなどの不安要素があるという人が入居を希望することが多いです」(藤堂社長)

 現在、2棟9戸は満室。家賃は部屋によって異なり、3万9000円から7万円ほど。そこに管理費1万3000円と「猫費用」として5000円がかかる。

 利回り、利益率は決して高くないものの、運営開始以来、空室が出てもすぐに埋まる状況が続いているという。当初は半年ごとの契約更新としていたが、長期入居が多く、1年契約に切り替えた経緯があり、安定した経営を実現している。

▲入居者と共に保護猫が生活している

猫を共通の話題として円滑に

 猫は、猫用のドアを使ってシェアハウスの各個室に自由に出入りすることができる。餌や病院の費用は入居者たちの支払う猫費用から出し、エサの時間はノートに記録して共有している。

 現在稼働するシェアハウスのうち1棟は24年に移転しており、入居者の一部も猫と共に移動した。そのうちの一人は「1人暮らしだとペット可のマンションはなかなかないですし、あっても家賃が高額です。猫を見ながら在宅ワークをするなど、癒やされますね」と語る。

▲世話の状況を記録するノート

 ほかのシェアハウスにも住んだことがある入居者からは「シェアハウスとはいえ会話がなかったり、トラブルがあったりということは多いです。ここは猫の世話などを通して交流がありますし、ボードゲームの会や一緒にご飯を楽しむこともあります」という声が聞かれた。

猫用造作と壁でトラブル予防 

 シェアハウスにする物件の選定基準を聞くと「日当たりが良い場所があり、猫が上下運動できること」という。猫は犬に比べ、平面での広さよりも上下運動できる高さを必要とする。階段があるだけでも良く、実際、取材中にも猫が階段を使って移動する様子が見られた。

 また猫飼育可の物件で管理委託も請け負う藤堂社長は、経験を生かして猫飼育のための造作を設置している。猫が遊ぶキャットウオークのほか、各個室の入り口にも猫用の小さなドアがある。壁には臭いと爪研ぎを防止するため漆喰を塗り、窓とキッチンの入り口には脱走防止柵を取り付けた。

 「猫物件のポイントは、脱走防止の設備をしっかり導入することがあります。脱走防止柵については、委託を受けた物件でもオーナーの許可が出れば取り付けるようにしています」(藤堂社長)

▲個室の窓にも脱走防止

(2025年9月号掲載)
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