Special Interview・青山財産ネットワークス:新たな社会貢献

相続事業継承

<<Special Interview>>

【Special Interview・青山財産ネットワークス:新たな社会貢献】に続き、2025年から公益法人設立支援サービスを始めた青山財産ネットワークス(東京都港区)の蓮見正純社長に話を聞く。

未来を担う人材を 教育や文化面で支援

─公益財団の設立による社会的な意義は何でしょうか。

蓮見 それはまさに教育や文化支援など、未来を担う人材への支援でしょう。今の社会では例えば、母子家庭、父子家庭、そして両親が亡くなったことで経済的に苦労している学生が多い。そうした社会的弱者の方が増えており、しかしそれをすべて税金で賄うのは難しい。そこで資産をお持ちで心ある人たちが、その足りないところを補うことは、良い社会を生んでいくことになるのではないかと思います。

─これまでに御社が世話をしてスタートした公益法人で、すでに実績を上げているケースではどんな事例がありますか。

蓮見 例えば公益財団法人しまなみ奨学財団(広島市)は設立して10年がたちますが、これまでに約200人の学生に奨学金を支給してこられました。奨学金は年間初年度170万円、それ以降は120万円。これは給付であって、返済義務はありません。


─学生にとって大変ありがたい支援になりますね。財団を立ち上げた方はどんな人なのですか。

蓮見 この財団を立ち上げたのは経営者の奥様です。その方は、貧しい境遇にある人達が十分な教育を受けることができなかったのを見てきました。そこで、そういう負の連鎖が続いていくのはよくないとご自身の資産の一部を財団に寄付した。ですので、給付の対象としては、児童養護施設で生活していた経験がある大学生となっています。

─財団による支援というとやはりそうした学生向けの奨学金が中心でしょうか。

蓮見 一番多いのは奨学金です。そして、もう一つ当社がおすすめしているのが研究助成金です。これがツートップですね。研究助成の例としては、若い研究者で特にニッチな分野の研究をしている人を対象に研究助成金を支給している財団があります。この財団を立ち上げられた方は、医者で今は大学の教授になられていますが、やはりご自身がニッチな分野の研究をしてきて、ご苦労された。そこで同じようなニッチな研究をしている若い研究者を応援したいと、財団を立ち上げられたのです。

─ほかにはどんな支援の形がありますか。

蓮見 研究助成の団体では、大学や大学院の研究者への助成だけでなく、小学生への出張理科実験教室も開催しています。またクラシック音楽を楽しむ土壌の醸成や、伝統的な海外スポーツの日本国内での普及支援のような文化普及の財団もあります。

 

年間事業費は5000万円が過半数

─「公益財団」などと聞くと相当な規模の組織で資金も多額な団体をイメージします。実際、上場企業の創業者などが立ち上げた財団法人の中には、資産額が数百億円というところもあります。しかし、実際には、そんな大きなものばかりではないのですね。

蓮見 先ほど紹介した「公益財団法人しまなみ奨学財団」は、奨学金などによる年間の事業費が1億円を超えますが、実はこれは大きいほうです。内閣府のデータを見ますと、年間の事業費が5000万円未満の団体が過半数を占めています。1000万円規模の財団も結構あるようです。恐らく皆さんがイメージされているような大規模な財団ばかりでは、むしろないということです。

 

公益法人で社会貢献を行う海外の資産家

 海外では公益法人を活用した社会貢献の事例が多い。
 例えば、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と妻のメリンダ・フレンチ・ゲイツ氏が2000年に設立した世界最大級の慈善団体である「ビル&メリンダ・ゲイツ財団は有名だ。主な活動として、途上国における健康問題の改善や貧困撲滅、アメリカ国内での教育機会の提供を行っている。財団の理事は、主要な寄付者であるゲイツ夫妻にウォーレン・バフェット氏も加えた3人が担っている。
 アメリカ出身の製薬会社社長のサー・ヘンリー・ウェルカム氏の財産を管理するため1936年に設立された財団「ウェルカム・トラスト」も名が通っている。イギリス・ロンドンに本拠地を置き、国際保健などへの研究支援を目的としている。生物医学研究に年間4億ポンド以上を出資する、世界屈指の資産規模の医療研究財団だ。

 

─結局、規模の大小が問題ではなく、その財団が公益性の高い活動をきちんとしているかが大事ということですね。

蓮見 これも繰り返しの話になってしまいますが、財産をたくさんお持ちの方がここで貢献にその財産を活かしていくことが、その方々にとっても人生を良くしていくのだと思います。公益法人の設立を考えることで、富裕層の人たちが今まで「ためる」「増やす」ことに意識がいっていたものを、今度は社会の困っている人たちに対して「与える」ということに意識が向かう一つのきっかけになればいいと思っています。

─ところで、御社は財産コンサルティングの企業として、土地持ちの資産家や企業オーナー、金融資産家ら顧客を3000人以上抱えているそうですね。

蓮見 5月に発表した決算資料だと3258ファミリーです。そのうち個人資産家が約2700人、企業オーナーが500人です。金融資産家と不動産資産家という区分けで捉えるとしたら、7〜8割は土地持ちの不動産資産家の方々でしょうね。資産規模でいうと平均10億円ぐらいです。企業オーナーの方の場合はもっと多いと思います。

─今回、始めた公益法人設立支援サービスは、これまでの御社のコンサルティング業務の中ではどんな位置付けになりますか。

蓮見 当社では総合財産コンサルティングとして、不動産小口化商品の提供や、地域創生コンサルティング、事業承継ファンドなど八つの個別サービスを提供してきました。公益法人設立支援は、それに続く新しいサービスだと考えています。公益財団について個別サービスとして新規のお客さまにも知ってもらい「青山財産ネットワークスという会社はそれ以外にもいろいろなサービスを提供しているのか。では財産全体についてのコンサルティングもしてもらおうかな」と考えていただけたらありがたいですね。

会社情報

青山財産ネットワークス[証券コード:8929]
資産家や企業オーナー向け財産・事業承継コンサルを展開
 個人資産家や企業オーナー向けに財産・事業の承継に関連するコンサルティングを手掛け、資産運用のための不動産事業も行う。また、2025年1月、「相続」に強みを持つ国内有数の専門家集団「チェスターグループ」との経営統合により、800名を超える従業員を有している。

 

(2025年10月号掲載)
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