【連載】色彩の力:11月号

賃貸経営住宅設備・建材

Vol.11 印象を引き締めるメタリックカラー
使い方次第で完成度が上がる

使い方に広がりがある色

 新築でもリノベーションでも、配色は決まったけれど「なんとなくピタッとこない」気がすることはありませんか? そこには「メタリックカラー」が関係しているのかもしれません。今回は「メタリック」をテーマに、金属色の活用とほかの色との組み合わせについて考えてみましょう。

 ここでいうメタリックとは、光沢のある金属調カラーだけでなく、マット(つや消し)仕上げや酸化処理など、落ち着いた質感の金属色も含めた「建築に使われる金属の色」を指します。

 代表的なメタリックカラーには、シルバー、ゴールド、ブロンズ、ブラックなどがあり、色によってそれぞれ異なるイメージです。シルバーはシャープで洗練された印象を与え、ゴールドやブロンズは温かみや高級感を、ブラックは引き締め効果と重厚感をもたらします。

素材感や質感を見極めて建物をグレードアップ


 そして、ほかの色との組み合わせによって印象がさらに広がるのです。例えば、シルバーは寒色系のブルーやグレーと合わせることでクールかつモダンな印象を強調し、一方でベージュや赤みのあるブラウンと組み合わせれば、冷たさを和らげ、柔らかい落ち着きが生まれます。ゴールドやブロンズは木目調と非常に相性が良く、自然素材と組み合わせるとぬくもりと品格が共存する空間をつくることができます。また淡いイエローやピンクは、ブラックと組み合わせることで落ち着いた空気感を漂わせるでしょう。

見た目の印象を変える存在感

 こうした金属の色の魅力は、派手に目立たせるというよりも、素材感や質感を生かして「雰囲気を整える」という点にあります。控えめながらも確かな存在感があり、建物全体の完成度を引き上げてくれるのです。

 賃貸住宅では、第一印象を左右するのは外観です。高価な設備を導入しなくても、色と素材の組み合わせにより「しっかりした物件」という印象を持ってもらうことができます。

 サッシやポスト、玄関ドアなどの金属部分は長く使われるため、計画段階で全体とのバランスを考えることが大切です。色や質感を工夫することで、派手さがなくても印象に残る建物になります。

 色は見た目を整えるだけでなく、「ここに住みたい」という気持ちにつながる大事な要素です。金属色を上手に取り入れることは、選ばれる賃貸住宅づくりの一歩となるでしょう。

眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。

(2025年 11月号掲載)

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