<<非住宅ではじめる遊休地活用ビジネス 第11弾>>
多様なジャンルの無人FCブランドを紹介
無人フランチャイズビジネスで土地活用
人員を省いた仕組化で高い利益率を実現
近年、無人で運営できるフランチャイズビジネスが増加している。無人ビジネスは雇用・育成の必要が無く、有人ビジネスと比較して高い収益性が望めることから、遊休不動産の活用に適している。そこで今回は洗車場、フィットネス、マッサージの3つの無人フランチャイズビジネスを紹介する。新たなテナント・土地活用の参考にしてほしい。
収益性に大きなメリット
無人店舗はシステムや設備の導入によって、従来の店舗運営では不可欠だった店員の常駐を不要とするビジネスモデルだ。近年は、無人販売店やセルフエステ、無人インドアゴルフ場など多様なジャンルの無人店舗が営業している。
無人経営には収益性の面で大きなメリットがある。人員を省いた仕組化により、24時間・365日営業が可能ため早朝や夜間のニーズを獲得できる。また、人件費が掛からず、業種によっては有人店舗よりも高い利益率を狙える。
中でも店舗数を拡大している無人ブランドは、フランチャイズ展開しているブランドが多い。フランチャイズは、加盟金やロイヤリティを対価にノウハウやサポートを提供してもらえるシステムだ。そのため、加盟オーナーは自力でサービスを構築する必要がない。無人経営に必要なシステムや店舗設計などは本部のノウハウを利用できるため、未経験でも安心して開業できる。無人店舗の中には、5~10坪の狭いスペースでも開業可能なブランドもあり、小規模な不動産の活用にも適したビジネスも多数生まれている。
遊休地・遊休テナントの活用方法の一つとして、無人フランチャイズ店舗の開業も参考にしてほしい。
- ▲ランニングコストの削減を実現した低コストなフィットネス業態
- ▲事業の多角化や既存敷地の有効活用ができる洗車場ビジネス
洗車場:洗い放題.com ふるーる洗車
無人×サブスクモデルの洗車場
天候に左右されない高収益性を実現
京南(東京都昭島市) 田澤孝雄 社長
天候に影響されない収益構造
洗車場ビジネスを展開する京南は、昨年7月に初の完全無人店舗である「ふるーる洗車」福生店をオープンした。同ブランドは無人洗車場と定額制のサブスクサービスを組み合わせたビジネスモデルを採用している。ユーザーは月額料金を支払うことで、好きなタイミングで何度でも洗車ができる。また、車両ナンバーを識別する専用のカメラを設置しており、ユーザーはナンバーに紐づいた登録情報からサービスを受けるため、有人による案内を省いた無人経営を可能とした。
このモデルの最大の強みは、天候に左右されない安定した収益性にある。洗車業は雨天時に売上が大きく減少する問題があったが、サブスクモデルにすることで天候に関係なく一定の売上を確保できる。さらに、無人運営による人件費削減で、高い利益率を維持できる。
同社は、土地活用の一環として洗車ビジネスに着目し、2007年にスタートした。しかし従来の洗車業では、天候や人材確保の問題から収益が不安定になることが多く、安定したビジネスモデルを模索する中で無人×サブスクの形態を構想。2013年から洗い放題のサービスを開始している。同社は、ポスティングなどの集客は行わずWEBマーケティングに特化している。実店舗に足を運ぶ前のサブスク登録を狙い、本部がWEB広告を出稿し各店舗の集客を支援している。
加盟するには、洗車機2台設置を想定した場合、初期投資として5000万円ほどが必要だ。内訳は洗車機2台が2000万円、土地整備・設備投資が1000万円ほど。このほか加盟金が300万円、監視カメラやナンバー識別用のカメラが13台ほどで1000万円が必要になる。これに加え物件取得費がかかる。同社は、ガソリンスタンドやホームセンターなどの併設型ビジネスを展開する企業の加盟を推奨しており、150坪ほどの広さがあれば洗車機1台から始められるという。低コストで洗車事業を展開でき、事業の多角化と既存敷地の有効活用ができる。
月商はアベレージで300万円ほどだ。経費は水道光熱費の16%に加え、洗車用の液剤が6%かかる。そのほかにロイヤリティとしてサブスクの売上の20%が必要だが、利率の高い収益モデルとなっている。

▲昨年7月にオープンした無人経営の福生店
フィットネス&美容:HITORI WELLNESS
スマートミラーを活用した女性専用個室フィットネス
12ジャンル600本以上のVODがインストラクターに
ミラーフィット(東京都目黒区) 黄皓 社長
地方に強いフィットネス
ミラーフィットが手掛ける「HITORI WELLNESS」は、昨年9月に1号店をオープンした、女性専用の無人フィットネス&美容スペースだ。
同社は、もともとスマートミラーの製造開発と、その中で提供される運動や美容コンテンツのVOD(オンデマンド動画)開発を手掛ける。HITORI WELLNESSは同社の製品を体験できるリアル施設として誕生した。
同店では同社製品のスマートミラー「MIRROR FIT.」を中心とした運動を無人かつ個室で行える。同製品には、ピラティスやヨガ、筋トレやレズミルズなど12ジャンル600本以上のVODとライブ配信が内蔵され、映し出される映像で運動指導が受けられる。
美容スペースでは、基礎化粧品や美容機器を使い放題利用できる。トリートメントやスキンケア、ヨモギ蒸しなどメニューが充実しており、運動に抵抗がある初心者層でも来店しやすい仕組みづくりをしている。
同社は、「地方での女性の選択肢を増やす」というビジョンのもとにこの事業を展開している。市町村あたりのターゲット女性人口が4万人以上ある地域を選定し、幹線道路沿いの物件を中心に出店。現在の店舗の広さは30~40坪ほどだ。40坪の場合、運動をする個室ブースが7部屋、美容ゾーンが6席、シャワールームが3部屋のほか、有酸素マシンを置いたスペースがある。
運動にはMIRROR FIT.を活用するため、インストラクターを採用する必要が無く、必要なスタッフはパート1人のみ。そのため人件費は月18万円ほどに抑えられる。事業が軌道に乗った際の月間経費は家賃が25~35万円、システム費21万円、ロイヤリティが5%のほか、諸経費を合わせた120万円ほどだ。これに対して売上は、250~300万円と見込まれ、経費を差し引いた手残りは130~180万円ほどだ。SNS広告や黄皓社長自身がインフルエンサーである強みを活かした集客を行い、初月から損益分岐点を超えた店舗も多い。
初期投資は加盟金400万円、内装費に約1400万円、販促費300万円、1台あたり25万円のMIRROR FIT.を店舗に4~5台導入、物件取得費などを含めても総額2500万円ほどとフィットネス業界においてローコストを実現している。

▲美容を楽しむゾーンと、運動のための個室がある
マッサージ店:無人マッサージ屋ちょこま
最新の機械を手軽に使える無人マッサージ店
約10㎡、250~300万円で出店可能
あさあさ(東京都台東区) 森俊彦 代表
気軽に立ち寄れるマッサージ店
2023年オープンの「無人マッサージ店ちょこま」は、いつでも好きな時間に無重力感覚のリクライニングが楽しめるマッサージチェアを設置している。24時間365日営業しているため、いつでも気軽に立ち寄ることができる。
同店の利用方法は、マッサージチェアに座って料金を支払うだけ。マッサージ機にコインを入れると自動でスタートし、首や肩、背中や腰など全身のマッサージを楽しめる。利用時間は10分(300円)、20分(600円)、30分(900円)から選べる。
加盟プランは2つあり、加盟金50万円でロイヤリティ10%、加盟金100万円でロイヤリティ5%のいずれかを選ぶことができる。そのほかにかかる費用は、マッサージチェア購入費や物件取得費、看板や内装費、キャッシュレス決済システム導入費などで約200万円で、初期投資総額は250~300万円となっている。
ロイヤリティ5%プランの場合の収益モデルは、マッサージチェア売上25万円と天井広告売上1万6500円を合わせた月商が26万5000円で、利益は7万5000円を見込む。経費は家賃15万円、光熱費1万5000円、雑費1万2500円、ロイヤリティ1万3325円だ。天井広告は店舗内の天井に近隣店の広告を掲示するもの。
無人営業のため、オーナー業務は週1回の清掃と現金回収のみ。商品販売がないため、在庫補充や盗難対策などは不要だ。商品の管理やスタッフの教育が要らず手離れが良い反面、商品や接客による集客が期待できないため物件選びが重要になる。そこで同社は、直営の実績をもとにした物件選定のアドバイスや、物件の紹介を行っている。
店舗物件の広さは10~20平米が目安で、マッサージチェアを2~3台設置する。商店街や駅近など人通りの多い立地の1階での開業を推奨している。また、入店ハードルを下げることや防犯上の観点から、正面がガラス張りの物件が好ましい。
直営では道の駅への出店なども計画しており、ドライバーの休憩場所としての需要を狙っていく。電車利用者だけではなく、車の利用者にもアプローチすることで、更なる認知拡大を目指している。

▲気軽に立ち寄りやすい店舗デザイン
(2025年11月号掲載)