<<Focus 〜 この人に聞く〜>>
価値の下落した別荘群を宿泊施設に再生
稼働率8割超、地元住民の雇用も創出する
旅行サービス事業を展開する百戦錬磨(仙台市)はバブル崩壊以降、客足が遠のいた宮城県の別荘地「山水苑」の別荘群を改修し、地域一帯を再生している。各別荘には国内外から宿泊客が集まり、連日高い稼働率となっている。上山康博社長に話を聞いた。
百戦錬磨(仙台市)
上山康博社長

――山水苑の事業について教えてください。
山水苑は宮城県蔵王町で、1970年代に開発された700~800区画の別荘地です。バブル崩壊以降、吸引力が低下しており、土地と建物を合わせて500万円でも売れない状況でした。そこで不動産の管理やコンサルティングを行うガイア(宮城県白石市)と連携し、宿泊施設として活用する道を探りました。
――開業後の手応えは。
初年度の2018年から稼働率8割を達成し、投資利回りは数百%に。現在は70軒が稼働しており、物件価値は2000万~2500万円と当初の4~5倍に上昇しています。
――オーナーや地元の人々から反発はありませんでしたか。
反発がありそうだと見越して、いくつか対策を講じました。まず既存のホテル・旅館との競合を避けるために食事は提供せず、宿泊客には地域の飲食店を利用してもらう仕組みに。各別荘の掃除やベッドメーキングなどは地元の知的障がい者や子育て中の人に依頼しました。多様な仕事をつくったことで、地元の人々からも好意的に受け止めてもらえましたね。長期滞在する宿泊客を増やすことも重視しました。長期滞在者が増えるほど、地域で買い物や食事をする機会も増え、経済効果も生まれますから。
――同様の事業を検討するオーナーは何から始めるべきでしょうか。
管理会社選びです。地主・家主は自分の物件を誰かに任せる傾向が強い分、どこに任せるかで事業の成否が決まると言っても過言ではありません。都市部なら、19年以前から実績がある日本資本の会社がいいでしょう。ただし地方ではそうした会社が非常に少ない。協業できるビジネスパートナーを見つけて、一緒に事業をつくり上げていく姿勢が必要ですね。パートナーを探す際は、各自治体や空き家活用に取り組む団体に相談してみてください。私が所属する「スムヤドスム」というプロジェクトも選択肢の一つです。
――地方の不動産オーナーの商機は。
むしろこれからは、地方に土地を持っている人にこそチャンスがあります。今は、これまでは価値がないと思われていたものに価値が見いだされる時代。「使い道がない」と思っている土地でも、農地付き別荘や「アルベルゴ・ディフーゾ(地域丸ごとホテル)」にするなど、新しい活用方法があります。顧客層を国内だけでなく海外にも広げる視点も大切です。ただし重要なのは、都会でも地方でも、地域の文化や生活に配慮して進めること。地域との共存なくして、持続的な事業は成り立ちません。
(シモカワヒロコ)
KLab(クラブ)取締役事業本部長を経て、2007年に楽天トラベルの執行役員(新規事業担当)に就任。12年に同社を退職後、百戦錬磨を設立。内閣官房や農林水産省、観光庁などの委員も務める。
(2025年12月号掲載)






