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バス会社の遊休地を賃貸住宅として活用
職住一体型住宅でコミュニティーを活性化
JR中央線三鷹駅からバスで28分ほどの終着点に、職住一体型賃貸住宅「meedo(みいど)」が誕生した。小田急バス(東京都調布市)とブルースタジオ(東京都中央区)による共同開発の第2弾は、郊外住宅地の可能性を掘り起こす試みだ。
ブルースタジオ(東京都中央区)
大島芳彦専務

meedoは、2社が2021年に東京都狛江市で手がけた「hocco(ホッコ)」に続く第2弾の職住一体型賃貸住宅プロジェクトだ。いずれも駅から遠い住宅地に位置し、入居者が自宅で店を開くことができることを特徴としている。全13戸の木造2階建てが並ぶ。

▲2025年7月に開催したオープニングイベントの様子
住宅のタイプは、本格的な店舗利用ができる「あきないタイプ」、小規模店舗兼用の「なりわいタイプ」、制作・事務向けのSOHO利用を想定した「アトリエタイプ」、店舗利用を想定していない「住居専用タイプ」の4種類。仕事との距離に合わせて暮らし方を選べる構成だ。あきないタイプ・なりわいタイプ・アトリエタイプの店舗併用タイプの賃料は18万4000〜23万円、住居専用タイプは21万円台となっている。
住民以外も自由に出入り可能なエリアには、井戸や太陽光と風力のハイブリッド式街灯のほか、かまどとしての機能を持つベンチやトイレに変形するマンホールといった防災設備を備え、停電時にも水と電力を確保することができる。JR三鷹駅から路線バスで28分かかる住宅街の一角で、地域の交流、移動、防災の拠点として機能することを目指す。
駅から遠い遊休地を活用する

meedoの全体像
- ▲あきない住宅の1階部分は本格的なキッチンがある
- ▲敷地内にはバスの折り返し場がある
路線バスの終点や、折り返し場といったバス会社が所有する不動産は、一般的に賃貸住宅には向かない土地がほとんどだ。こうした駅からは遠い遊休地を活用したことが、同プロジェクトの特徴である。
設計を担当したブルースタジオのクリエイティブディレクター大島芳彦専務は「住宅地のど真ん中だからこそできることがあります」と語る。
プロ顔負けの趣味や特技を持つ住民が、マルシェのような感覚で気軽に自分の店を開くことができる住宅を目指した。店が入居者にとっての自己表現の場になる。同時にほかの住民にとっても、隣人のなりわいや人となりがわかることで安心して生活でき、顔の見える近所付き合いが可能な場所になっていく。そしてコミュニティーの拠点となることで、目標の1つであるモビリティーと防災の拠点としての価値も高まると大島専務は語る。
またmeedoでは「より本格的な店を開きたい」「自分の店は持たないがコミュニティーがある空間で暮らしたい」といった需要を満たすため、hoccoにはない客席がある本格的な店が開ける「あきないタイプ」とプライバシーが確保しやすい「住居専用タイプ」の建物も作った。
交流と公共交通利用の推進
小田急バスはmeedoの入居者にバス利用を促進する優待などの制度を整備、加えて敷地内に設置したシェアサイクルの優待制度も導入。公共モビリティーの利用を推進している。この活動は、シェアサイクルのポートを増設するなど、meedoの中で今後も随時拡大する予定だ。
- ▲住居専用タイプにも開かれた土間があるのが特徴だ
- ▲敷地中央にあるポンプ式井戸とブルースタジオ大木錦之介ディレクター(右上)、小田急バス不動産ソリューション部下村友明部長(左下)、中山晴政課長(左上)、萩原真希子課長代理(右下)
25年7月のオープニングイベントには約2500人が訪れ、入居店舗による屋台と地元農家による直売所、小田急バスとブルースタジオによる射的やヨーヨー釣りの屋台が並んで出店した。meedoに関わる人々と元からこの地域で暮らす住民との間で顔が見える関係が生まれている。10月15日時点では10戸が入居中だ。バスの終着点だった土地が、地域の交流の拠点へとなり、今後の発展が期待される。
(2025年12月号掲載)










