<<ランキングから見えた 入居者に人気の設備>>
「全国賃貸住宅新聞」が不動産会社に向けて毎年実施するアンケート調査を基に発表している「入居者に人気の設備ランキング」。今回は「付加価値アップ設備」部門で新たな動きがあった。「今後需要が高まると考えられる設備」と併せて見ることにより、トレンドを読み解く。
高速ネットとオートロック 付加価値上がる2トップ
インターネット無料 9年ぶりに二冠逃す
周辺相場より家賃が高くても入居が決まる「付加価値アップ設備」部門で、例年と違う動きが見られた。

「インターネット無料」が9年ぶりに単身者向け、ファミリー向け両方での首位を譲った。代わりにトップになったのは単身者向けで「高速インターネット(1Gbps以上)無料」、ファミリー向けで「エントランスのオートロック」だった。
高速インターネット無料は、テレワークやゲームで通信環境を確保するためにニーズが高い。前回の4位から順位を上げた。ファミリー向けではエントランスのオートロックに次ぐ2位。家族それぞれがネットを使用した際に通信速度が落ちることを気にして望まれている。
エントランスのオートロックが人気なのは防犯意識の高まりからだ。ファミリー向けで前回2位から1位に、単身者向けで前回3位から2位タイとなった。家賃が1000~2000円高くても入居が決まると捉える不動産会社もある。
1位でなくなったとはいえインターネット無料の人気は根強い。単身者向けで2位タイ、ファミリー向けで3位となっている。ネット費用が家賃に含まれていれば割安に感じる入居希望者は多いようだ。
宅配ボックス 単身、ファミリーで4位
単身者向け、ファミリー向け共に4位にランクインしたのが「宅配ボックス」。本人が不在のときに荷物を受け取ることができる単身者はもとより、共働きのファミリー層にも支持されている。
近年はネット通販に限らずフリーマーケットアプリの利用も広がっていることから、必要性を求める声がさらに高まっている。保守管理付きの性能が良いものだと、家賃を2000~3000円程度上げても入居が決まる例があるという。
新たに三つの設備が 10位以内にランクイン
今回は「24時間利用可能ごみ置き場」「都市ガス」「エアコン」の三つが新たにランクインした。
単身者向けで8位、ファミリー向けで10位になったのは24時間利用可能ごみ置き場。曜日や時間に関係なくごみを出せることで人気となっている。特にシフト勤務や勤務時間が長い人から強いニーズがある。同設備があることで家賃が3000円高くても成約する例があるという。
単身者向け、ファミリー向け共に9位の都市ガスは、光熱費を抑制することができる点が支持された。大都市圏では、LPガスの物件より家賃が2000~3000円高くても都市ガスの物件が選ばれているようだ。
入居を決める絶対条件の設備でニーズの固定化が鮮明
エアコンが3年連続二冠
この設備がなければ入居が決まらない「絶対条件となる設備」部門では、単身者向け、ファミリー向け共に「エアコン」が1位となった。両方での首位は3年連続。ここ数年の猛暑の影響で入居希望者に「設置されていて当然」と受け止められている。

部屋探しの必須条件としておなじみになったが、一方で、ただエアコンがあればいいというわけではない。入居希望者の中には、物件に設置されたエアコンの製造年月日をチェックする人もおり、古いエアコンだと入居の決め手にならない場合もあるので注意が必要だ。
室内洗濯機置き場 前回に続き上位
「室内洗濯機置き場」が単身者向けで前回に続き2位、ファミリー向けで1つ順位を落としたものの3位にランクインした。洗濯機を外に置くことを想像しにくいのか、20~30代の若い世代から特にニーズが高いようだ。またファミリー層の中には、ドラム式洗濯機が設置可能な大きいサイズの置き場を求める声が上がった。
単身者向けで前回と同じ3位、ファミリー向けで前回3位から2位に上がったのが「テレビモニター付きインターホン」。
「付加価値アップ設備」部門におけるエントランスのオートロックと同様に、防犯への関心の高まりを受けて上位にランクインした。不要な勧誘や宅配員を装った不審者に対応するために設置が求められている。「20~30代の単身女性で8~9割、単身男性も2割が必須条件としている」とする不動産会社もあった。
また大都市圏と比べてエントランスのオートロック付き物件が少ないエリアでは、オートロックの代わりとしての需要もある。
このほか「独立洗面台」が単身者向けで6位、ファミリー向けで4位とそれぞれ前回と同じ順位をキープしており、人気の高さがうかがえる。
シングルレバー水栓がトップ10入り
単身者向けの9位には「シングルレバー水栓」が新たにランクインした。サーモスタット(室温調整装置)混合水栓と共にニーズが高まっているという。
一方、同部門においては、シングルレバー水栓以外で単身者向け、ファミリー向けの両方で10位以内に入った設備が前回と変わっていない。単身者向けでは1~6位、ファミリー向けでは1位と4~7位で順位変動もなかった。
トップ10の顔触れがほとんど同じなのはここ数年続いている。入居者のニーズの固定化がより鮮明になってきたといえそうだ。
宅配ボックス、ネット環境 今後の需要にも期待集まる
IoT設備の動向も注目すべき
今回のアンケートでは、「今後需要が高まると考えられる設備」についても聞いた。

複数回答によるもので、1位は宅配ボックスだった。戸数分あることや冷蔵機能付きのものを求める声が上がった。また1位とさほど差がない得票数で2位になったのは「インターネット環境」だ。
これらの結果を見ると「付加価値アップ設備」部門とのつながりも垣間見える。宅配ボックスは、前述したとおり単身者向け、ファミリー向けの両方で4位だった。インターネット環境でいえば、高速インターネット無料とインターネット無料とが単身者向け、ファミリー向け共に3位以内に入っている。「今後需要が高まると考えられる設備」の上位二つが、実際に付加価値アップができる設備として人気を集めているのだ。
さらにいえば、宅配ボックスは「絶対条件となる設備」部門でも単身者向けで7位、ファミリー向けで9位タイとなっている。インターネット無料に至っては、同部門の単身者向けで4位、ファミリー向けで7位にランクインした。付加価値アップができる設備として認識されているとともに、必須な設備になっていることがうかがえる。
今後は高速インターネット無料の動きも気になる。付加価値アップができる設備としてすでに高い人気がある中、必須アイテムとしても認識され始めるのではないか。次回以降の調査で「絶対条件となる設備」部門のトップ10に入ってくるかどうか注目だ。
このほか「IoT設備(スマートホームハブを含む)」や「スマートロック」が今後需要が高まると考えられる設備として挙げられている。家主はこれらの動向にも目を向けておきたい。
入居希望者に敬遠される設備Top10

今回は「入居希望者に敬遠される設備」についても聞いた。1位は、2位に大差をつけた「和式トイレ」。また「室外洗濯機置き場」が4位になった。製造から10年以上の「古いエアコン」も5位にランクインしている。
(2025年12月号掲載)

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