着工前に満室となった賃貸住宅

土地活用賃貸住宅

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着工前に満室となった賃貸住宅
生まれ育った場所の魅力を引き出す

竣工予定日の半年以上前に早くも入居が決まった賃貸住宅がある。埼玉県新座市に建設中の「ケヤキファミリア」だ。まちづくりや地域コミュニティー醸成を得意とする1級建築士事務所・チームネット(東京都世田谷区)と、地主・並木家の長男である並木陽児オーナー(東京都豊島区)が中心となって、2026年4月の竣工に向けた職住一体型賃貸住宅計画を進めている。

並木陽児オーナー(東京都豊島区)

 

 ケヤキファミリアの建設予定地である並木家の土地は、東武鉄道東上線朝霞台駅からバスを利用して 分ほどかかる場所に位置する。現在も並木オーナーの両親が住む母屋と、手入れの行き届いた芝生や季節ごとの花が咲く広い庭を特徴だ。
 この広い庭の一角に、4戸の木造2階建て職住一体型賃貸住宅、ケヤキファミリアが誕生する予定だ。

 各戸の専有面積は59・6~79・48㎡。家賃は16万7000~21万2000円だ。朝霞台駅周辺の1LDK物件の家賃相場が12万~13万円の中で、店舗併用住宅であることや、共有の庭のほか古い蔵を改装したコモンハウスのある環境が付加価値となり、高めの賃料を実現している。

▲全体計画イメージ

生まれ育った土地の活用

 並木オーナーがこの場所の活用を考えるようになったのは、最近5年間でのことだという。 20年の新型コロナウイルスの流行をきっかけに、週末は妻と子どもを連れて実家に戻り、自然の中で遊ぶ時間が増えた。その中で、大学進学とともに遠ざかっていた「田舎」に豊かな自然と生活が残っていることに気付いたのだ。

 一方で、今回のプロジェクト予定地の近くで並木家が所有する、3階建て25戸の賃貸マンションに空室が目立つことに懸念が及んだ。そこでまずはマンションの手入れをすることに決め、その一環で園芸事業者を探し、植栽を手入れした。この時依頼した人物がチームネットのプロジェクトに参加した経験があり、ここで並木オーナーは同社の存在を知った。

 

 チームネットは、環境共生をキーワードとした住まいやまちづくり、設計・運営コンサルティングを手がける建築士事務所だ。東京都世田谷区にある樹齢200年以上の欅(けやき)の木を残した環境共生型住宅の「経堂の杜」や、「欅ハウス」などで知られている。

 「初めは欅ハウスの存在を教えてもらいました。大きな欅の木を中心に住民たちがコミュニティーを形成している姿が、この土地の未来像と重なり理想的に思えたのです」(並木オーナー)

  23年6月末、並木オーナーがチームネットの甲斐徹郎会長に連絡を取ったことで、ケヤキファミリアの構想が動き出した。

着工前に説明会を開催

 当初、並木オーナーの両親はこの場所に賃貸住宅を新築することに不安感を示していた。すぐ近くのマンションに空室が多かったこともあり、立地の利便性があまり良くない土地で新しい家を建てて入居者が集まるのか心配していたという。

 「甲斐さんが実家に来てくれて、両親を交え、何度もプレゼンテーションや話し合いをしました。この土地の歴史や両親自慢の庭を評価してくれたことで、両親も多少前向きになってくれたようです」(並木オーナー)

 それでもまだ両親は不安を拭えないようだったが、甲斐会長の「もしも入居者募集説明会で手応えがなければ引き返せますよ」という説得を受けて計画を見守ることに決めた。

 結局、両親の心配は杞憂(きゆう)に終わり、 25年7月下旬に2回行った説明会の後、8月には4戸すべての入居者が決まった。翌年4月の竣工どころか10月の着工よりも早く決定した形だ。

 説明会では入居希望者らが予定地を見学したほか、甲斐会長や並木オーナーからコンセプトや土地の歴史、この企画に込めた思いなどが語られた。

▲7月の入居者募集説明会での様子

 1階で店舗を運営しながら2階で暮らす設計の住宅は、着工前の募集のため、キッチンの位置など、ある程度入居希望者の要望を間取りに反映させることができる。緑豊かな庭の様子や古い蔵を改装したコモンハウス、共同の菜園も、見学者の目に魅力的に映った。

 「甲斐さんはこの計画に自信満々に見えましたし、私自身も彼を信頼して付いていこうと思っていました。われわれが自信を持って立てた企画の魅力が、入居希望者の皆さんにも伝わったようでうれしいです」と並木オーナーは言う。

 工事は25年10月に開始した。4月の竣工、5月からの入居に向け、ケヤキファミリアは大きく動き出したばかりだ。

▲説明会では並木オーナーの両親も想いを語った

(2026年1月号掲載)

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