地元オーナー発信―複合ビル開発計画が中止(福岡)

賃貸経営トレンド

福岡|博多駅の複合ビル開発計画が中止

𠮷原勝己オーナー

 JR九州(福岡市)は2025年9月、JR博多駅の線路上空を活用した「博多駅空中都市プロジェクト」の中止を発表しました。この複合ビル開発計画が目指していたのは、駅南側上空にオフィスや商業施設、ホテルなどを整備した、博多口と筑紫口をつなぐランドマークの建設です。28年末の完成に向け仮設工事が進められていました。しかし、線路上空という特殊な条件による施工の難しさや、資材・人件費高騰により事業費が当初の約2倍に膨らんだことから、採算が取れないと同社は判断。これは都市開発における「採算性と象徴性」のバランスを問い直す出来事だといえます。

 今後は、地上・地下通路やデッキの整備など、より現実的な動線改善へと発想が転じる可能性も高いでしょう。再開発促進事業「天神ビッグバン」が進む中、博多エリアは独自の魅力と活力をどう再構築するのかを再び問われそうです。今回の撤退は一時的な後退ではなく、都市再開発の「持続可能性」を再考する転機であり、今後の不動産投資や都市計画の指針を示す象徴的な事例となりました。この先、高リスク・高コスト案件を避け、既存施設のリノベや用途転換など「低投資・高効率型」の再生プロジェクトが主流になるのかもしれません。

(2026年 1月号掲載)

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