2人の鑑定士を見つけておこう :一(はじめ)カンテイ

法律・トラブル不動産関連制度

<士業が語る不動産経営>

不動産資産のリスクヘッジ 2人の鑑定士を見つけておこう

 不動産鑑定士は不動産の価値を算出する専門家だ。数値に基づく客観的な査定で不動産価格を評価する。だが実際には、鑑定士により鑑定結果が異なることもある。はじめカンテイ(川崎市)の不動産鑑定士である石原晋志社長は「不動産資産が多い人ほど依頼できる不動産鑑定士を知っておく必要性が高い」と話す。自分に合う鑑定士をどのように見極めればいいのか聞いた。

贈与・相続時に役立つ鑑定

 不動産を所有している人が不動産鑑定を行うケースとして想定されるのは、市場で売却を検討する場合のほか、家族間で売却・贈与する場合、相続の際に代償分割(不動産を相続しない人に現金を渡す方法)を行う場合などです。鑑定費用は土地の規模や状態にもよりますが数十万~数百万円かかります。費用がかかっても価格を公平に示すことにメリットがある場合に不動産鑑定は有効な手段です。

 地主の場合、例えば生前に父から息子に土地を売って名義を渡しておこうというケースはよくあるでしょう。しかしこのとき、実態と乖離かいりした値付けをしてしまうと、税務署に贈与であると指摘されることになります。あまりに安い値付けをしてしまうと、息子が得る利益が大きいため贈与と見なされます。逆に、高すぎる値付けであっても息子から父への贈与と指摘される可能性があるでしょう。

 こういったリスクを回避するため、どの程度の値付けが適当であるかを測る目的で不動産鑑定が活用されているのです。

 また相続の際に不動産を1人に相続させ、そのほかの相続人に不動産を相続した人が現金を支払う場合もあるでしょう。具体的にいくら支払えばいいのかは、不動産の価値がわからなければ算出できません。このようなときに正確な土地の価値を判定したいとなれば、私たち鑑定士の出番です。

実は問題のある鑑定士もいる

 残念なことに、不動産鑑定士全員が正確な鑑定ができるとは限りません。情報のアップデートができていない鑑定士もいます。例えば、宅地建物取引業法の改正により、ハザードマップについて事前説明が義務付けられましたが、それを知らない鑑定士が多くいます。またハザードマップが改定されているのに鑑定価格が毎回同じという例もありました。

 実は、国土交通省は毎年鑑定評価モニタリングの一環で、鑑定事業者と鑑定士に対して立ち入り調査を行っています。立ち入り調査が入ったケースのうち約50・7%が行政指導を受けているのです。

 「問題がありそうな事業者と鑑定士」をあらかじめ選んでいる可能性はありますが、一定数以上、鑑定力が不足している不動産鑑定士がいることは事実のようです。それだけに、顧客側が相手のことをよく調べないまま鑑定士を選ぶのは、非常にリスクが高いと考えます。

DCF法に対応しているか

 では、どのような鑑定士なら信用できるのでしょうか。

 行政指導を受けた事業者や鑑定士の名前は非公開ですが、改善が必要となる事柄は「不動産鑑定評価等の適正な実施について」の文書の中で一般公表されています。例えば「最有効使用が複数記載されている(これにより、どのような鑑定評価手法を適用するかの前提が不明確になっている)」「アスベストの使用の有無について、調査内容からは無いと判断できないにもかかわらず『無い』と記載している」といった記述です。過去の鑑定実績を見せてもらい、この文書にある「改善を要すると認める内容」がクリアできているか見てみるといいでしょう。

 また収益不動産に対する不動産鑑定方法の一つとして、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法があります。この方法での鑑定に対応できるのかどうかも重要です。DCF法は収益還元法の一つで、その不動産が生み出す収益や売却の際の売却益を加味して鑑定を行うものです。将来の価値向上やリスクによる下落を見ることができるので、地主・家主にとってはしっくりくる計算方法でしょう。しかし、計算が複雑なので、DCF法に対応できていない鑑定士もいるのです。

 このような視点で、信頼できる鑑定士を最低2人は見つけてほしいと思います。得意・不得意もあれば、数年後、いざ不動産鑑定が必要となったときに情報のアップデートができていない可能性もあります。現時点で信頼できる鑑定士が2人いれば、いざというときに少なくとも1人には頼れるはずです。

 金額が大きいからこそ、専門家を自分の目で見極める力が大切だと思います。


解説
はじめカンテイ(川崎市)
石原晋志社長

不動産鑑定士。ニューメキシコ州立大学経済学修士課程修了。大手鑑定事務所および個人事務所に勤務後、2018年に地元である川崎市で開業。価格数万円から数百億円まで、さまざまな不動産評価に携わる。

(2026年 2月号掲載)

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