移住3年目で新築家主に 沖縄の事情に合わせた戦略

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移住3年目で新築家主に 沖縄の事情に合わせた戦略

 八重竜宝オーナー(沖縄県豊見城市)は現在、那覇市内のRC造のアパートのほか、ホテル1棟48室、石垣島のテナントビル、軍用地などの経営を手がける。

 転職を機に香川県から移住したのは26歳の頃。会社員として働きながら、激務に追われ「体を壊したら人生の終わりだ」と考えていた。それから給与以外の収入確保のために情報収集を進め、いわゆる「サラリーマン大家」として賃貸経営へ踏み出した。移住3年目、2015年のことだ。

八重竜宝オーナー(沖縄県豊見城市)


 同年に1Kロフト付き9戸のRC造アパートを新築。総額7700万円の投資だった。この建物は、9戸に対して3台しか駐車場がない。しかし、モノレールの駅やバスの停留所に近く、公共交通機関の利便性が高いエリアにある。当時の沖縄では珍しい、公共交通機関の利便性を重視した戦略が成功した。竣工から3カ月以内に満室となったのだ。

 当時、八重オーナーの年収は約290万円。融資が下りやすい条件ではなかった。しかし、工務店からの後押しやマイナス金利の追い風もあり、融資を受けることができたという。

民泊の波に乗り経営転換

 翌16年には、8800万円をかけて2棟目となるRC造12戸のアパートが完成する。この物件は賃料は抑えつつ戸数を増やすことで、収益性を高めた。こちらもすぐに満室となり、順調な滑り出しだった。

 そして2棟目建設の翌年の17年ごろから民泊予約サイトの「Airbnb(エアビーアンドビー)」が普及し始め、民泊が急速に広がる。八重オーナーは「民泊の方が賃貸より利回りがいい」と判断し、2棟のうち半分ほどの部屋を民泊へ転換した。このことがホテル運営へと踏み出すきっかけとなる。

 22年には、那覇市内にレストランを備えた48室のホテルが完成した。運営会社が借り上げる契約で安定収益を狙ったが、建設中に新型コロナウイルス感染症が流行。観光需要が消失し、八重オーナーは「収入がゼロなのに借入だけが残る状態。本当に死にかけました」と当時を振り返る。

 

 厳しいコロナ下での経営を何とかしのぎ切り、24年以降は沖縄の観光需要が回復。民泊の稼働が安定してきた。

 さらに、石垣島では築40年以上の商業ビルを競売で取得。築年数は経過しているが、大通りに面した好立地の物件だ。リノベーションを施して再生させ、テナントと自身の運営する民泊を組み合わせて運用している。

那覇市内のホテルの様子

仲介会社に任せず自分で調べる

 八重オーナーの賃貸経営にはいくつかのこだわりがある。仲介会社に丸投げせず、物件を検討する際は自ら登記簿を取り寄せて調査し、現地に行って細かく確認する。また沖縄は土地が少なく、RC造が主流のため建築費が高くなる。新築アパートで採算を合わせるために、仕様の工夫や徹底した立地選びが欠かせないという。

 できるだけ安く新築し、5〜6年で売却することを基本とし、出口戦略を常に意識する。売却時、買い手にとって「買いやすい価格帯」に収まるよう価格設定を考える。「万が一競売にかけられる事態になったとき、一番お金が手元に残るように準備しておく感じですね」と話す八重オーナー。

 これまではホテル建設やテナントビル購入など、大規模な投資も行ってきた。今後は小規模物件に注力する予定だ。収益の柱を複数持つことでリスクを分散させ、安定した経営を目指す。

 「大きい建物はもう造らないつもりです。価格が高くなると売るのも大変なので、初めに手がけたような規模で1億〜2億円の10戸以内の物件に切り替えていきます。立地が良くて、利回り7%を確保できる物件が理想です」(八重オーナー)

 土地が限られ、観光需要の波が激しい沖縄だからこそ、柔軟で現実的な経営判断が求められる。八重オーナーの姿勢からは、環境に合わせて変化し続ける沖縄流の賃貸経営が垣間見える。

(2026年 2月号掲載)

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