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九州DIYリノベWEEK2025
〜24のリノベ・まちづくり事例を発表〜
NPO法人福岡ビルストック研究会(福岡市)は2025年11月8~9日、「九州DIYリノベWEEK(ウイーク)2025」を福岡県久留米市と大牟田市などで開催した。九州各地のDIYでのリノベーションによる不動産再生事例を討論会と現地視察で学ぶもので、初日のシンポジウムには22チームが参加。合わせて24の取り組みが発表された。
NPO法人福岡ビルストック研究会(福岡市)
𠮷原勝己理事長

九州DIYリノベWEEKは「自分たちの好きなまちは自分たちで創ろう」をテーマに14年からスタートし、今回で12回目。
シンポジウム会場となった「久留米シティプラザ」の会議室には、各チームの関係者のほか全国各地の家主、企業経営者、学生ら約100人が訪れた。オンラインでも約30人が視聴。韓国からの参加もあり、福岡ビルストック研究会の𠮷原勝己理事長は「私たちの活動が広く国内外から見てもらえる時期に来た」とあいさつした。
発表された取り組みは空き家や古民家のリノベ、築古のビルや団地のリノベ、駅前や商店街のリノベなどさまざま。中にはエリア全体の再生を試みた例や官民が連携した例も紹介された。
各取り組みとも、主体者が物件の入居者や近隣住民を巻き込んで地域の活性化につなげており、そこには「リノベされる物件を中心に、関与する人々が共感でつながっている」という共通点が見えた。
2日目は、参加者が福岡県久留米市、柳川市、大牟田市の各地で実際の事例を視察した。大牟田市の二つのプロジェクトを紹介する。
| 吉原住宅・スペースRデザイン 吉浦ビル まるゐと H&A brothers 松葉ビレッジ ビンテージのまち 柳川インパクツ 大牟田ビンテージのまち のあそびlabo 月と太陽と |
たまなしリノベプロジェクト 合志リーダーズ(GDA&母家) 空き家再生スミツグプロジェクト 街なかリノベーション実践セミナーチーム Mark!肥薩線プロジェクト 伊佐てぃーむ。 頴娃おこそ会 ココトト ARCH ともそうや田布施 アドイシグロ |
空きビル1階をシェア型店舗にリノベ 大牟田ビンテージのまち
大牟田ビンテージのまち(福岡県大牟田市)
冨山博史代表取締役

かつては美容室
福岡県の南端に位置する大牟田市。中心部にあるJR鹿児島本線大牟田駅から程近い2階建てビルの1階に「マルシェのお店gosenfu(ゴセンフ 以下、gosenfu)」がある。
「マルシェをぎゅっと詰め込んだ店」という意味が店名に込められており、カフェやワークショップ、イベントなどに活用できるシェア型の店舗だ。
同ビルはかつて1階が美容室、2階が住居で、20年以上空きビルの状態だった。22年ごろからDIYでのリノベによる再生プロジェクトがスタート。再生後の24年2月、同店はオープンした。

改装前の同ビル1階
手がけたのは同市でまちづくり事業やDIYによる遊休不動産活用事業を行う大牟田ビンテージのまち(福岡県大牟田市)だ。同社代表取締役の冨山博史氏が当時を振り返る。
「当社は地元の商店街の再生事業に取り組み、不動産会社間で流通していた空き店舗は随分と減らすことができました。しかしながら、流通していない空き店舗はずっと残ったままという問題を抱えていました」
同ビルもそのような状態だったため、冨山氏は元の所有者からオーナーチェンジを経たうえでのビル再生を考えた。そこで、冨山氏とつながりがあり、福岡市や大牟田市などで築古物件の再生を行う吉浦ビル(福岡市)が新たなオーナーとなった。吉浦ビルによって2階のリノベが先行して開始された後、大牟田ビンテージのまちは、1階を賃借してDIYによるリノベを進めていった。

マルシェのお店gosenfuの外観
延べ約100人がDIY
大牟田ビンテージのまちは、事業者への依頼以外のリノベを23年1月から9月にかけて5回のワークショップで実施。各回に同社や大牟田市のまちづくり関係者、大学生や地域の親子連れが参加し、順次DIYを進めていった。
まずは事前に大学生の協力を得て内部の既存の壁を解体。次いで1月に開催した2回のワークショップで、壁面に断熱材を敷き詰め、下地の木材を固定していった。3回目のワークショップは3月に開催。石こうボードを張り付けていった。4回目と5回目は9月の開催で、カウンターを塗装したほか、壁面に手作りの棚を設置。また建物の外に花壇を設けて、草花を植え付けた。
- 断熱材を壁に敷き詰めるリノベ参加者
- リノベ完成後の内観
ワークショップには延べ約100人が参加。冨山氏は「解体から始めて、建物の構造を学びながらDIYが体験できるように企画しました。リノベのプロセスを参加者が共有することで、gosenfuのファンづくりにもつながったと思います」と振り返る。
gosenfuの開業・運営は、同社が手がける空き家問題の解決、まちのにぎわいづくりと防災・減災、創業支援などを目指した事業の一環で、国の助成金制度の活用も可能だった。このため、リノベの費用は約800万円かかったが、助成金とクラウドファンディングで調達した資金で賄った。
- 石こうボードを張り付けたワークショップ
- カウンターを塗装するリノベ参加者
開業後はにぎわいを創出
オープン後のgosenfuでは、さまざまな人が期間限定でカフェや雑貨店を営業した。25年4月から10月までは大牟田ビンテージのまちがスイーツバーを開業。地域住民や不動産再生事業者、起業を目指す若者ら多種多様な人たちが集った。それと同時に、まちづくりに関するトークイベントの会場としても定期的に活用された。トークイベントは25年11月までに17回催され、合計で延べ約500人を集客したという。

イベント参加者たちによる記念撮影
「空きビルの解消とまちのにぎわい創出に貢献できたと思います」と話す冨山氏。今後はgosenfuをシェア型のブックカフェにしていく考えだ。
元ラブホテルの空きビルを入居者と共に改装 吉浦ビル
吉浦ビル(福岡市)
森田英介CEO

同じく大牟田市の市街地では、吉浦ビルが元ラブホテルだった築45年のビル「愛ランド」でDIYによるリノベに取り組んでいる。元客室を居室として賃貸しているが、居室の内装は同社がサポートしながら契約者自身でリノベするのが特徴だ。
約20年間廃虚の状態
福岡市や北九州市で空きビルの再生に取り組む同社は22年、売りに出されている同ビルを見つけた。
同ビルは1980年竣工で敷地面積が約368㎡、鉄骨造3階建てで延べ床面積は約614㎡。すでに20年間ほど廃虚の状態だったという。建物内には11の客室とオーナーの居室があったが、それぞれの部屋にはベッドや布団、家具、雑誌、さらには出前メニュー表なども当時のまま残されていた。

愛ランドの外観。視察メンバーが多数訪れた
元ラブホテルの老朽ビルという特異な条件だが、当時の雰囲気をあえて残しつつDIYでリノベをすれば、特徴あるとがった物件になると同社は考えた。「まちの外から大牟田に人を呼び込むためにも、特徴ある物件が欲しいと判断し、22年7月に同ビルを取得しました」(森田英介CEO)
- 今も残るラブホテル時代の客室案内板
- ビル取得時のままの状態の空き室
家賃1万円で契約者がリノベ
取得後に給水管や貯水槽を改修。24年4月ごろから2階8室の入居者募集を開始した。家賃は3万円で、部屋は元の状態のまま引き渡すことを条件とした。ところが、物件を珍しがっての内見はあったものの、どの部屋も契約にはつながらなかった。
そこで同社は条件を変更する。内容は25年4月から26年3月末までの1年間限定で、
▼家賃1万円(期間終了後は3万円)
▼居室のリノベは契約者自身がDIYで行う
▼吉浦ビルはDIYをサポートし、材料費も負担する
というもの。これで募集したところ、インターネットやテレビで話題になり、25年11月上旬時点で4室が契約に至った。
多様な契約者と使用用途
4室それぞれの契約者は、東京都や福岡県に住みながら愛ランドの募集を見つけ、元ラブホテルという特徴と自らDIYをするという条件に共感した人々だ。
ユーチューバーが配信用、大工見習いが部屋づくりの実験用といった目的で借りており、現在、おのおのが自身の都合がいい時に部屋を訪れてDIYを進めている。
- 解体された壁面
- 契約者と進めた左官作業
吉浦ビルのスタッフは現場に立ち会い、作業をサポートする。契約者とどのような部屋にしたいのかイメージを共有し、適切な部材や壁紙などの提案もする。
作業は契約者のつくりたい部屋にあわせて進めていく。例えば既存の材料を剥がし、断熱材を敷き詰め、石こうボードを張り、漆喰で仕上げるなどだ。4室のうち1室は早ければ26年1月中にも完了するという。
「プロの事業者に頼むより半分ほどの費用で済み、家賃を頂きながらリノベができるので、当社としてもメリットがあります」(森田CEO)
入居者との共用部改装も構想
同社は現在、共用部のリノベには着手していない。今後入居者が増えた段階で、皆で共用部のDIYができないかと構想している。
森田CEOは「現在の契約者は愛ランドに共感し、ビルがこれから再生されていくことを楽しみにしています。今後もこういった思いを持った人たちが入居してくれて一緒に共用部をリノベすれば、物件の価値向上につながると考えています」と語る。
- 読書用に借りられた部屋のリノベ中
- リノベが進んだ後の様子
さらに、近隣住民にもリノベに参加してもらうことで、地元を盛り上げることができるのではないかと期待を寄せる。
(2026年2月号掲載)
















