地元オーナー発信―駅前の再開発中止(名古屋)

賃貸経営トレンド

名古屋|駅前の再開発中止で考える都市の方向性

杉村八千代オーナー

 名古屋鉄道は2025年12月、名古屋市の玄関口の一つである名古屋本線名鉄名古屋駅前で進められてきた大規模再開発計画のスケジュールを全体的に「未定」に変更すると発表しました。その理由として、建築資材費の高騰や深刻な人手不足、入札の辞退など、建設業界を取り巻く現実的な問題が挙げられています。

 大きな波紋を巻き起こしていますが、再開発が延期された今、必要なのは「完成を待つ街」から「変化の途中を楽しめる街」への転換ではないでしょうか。例えば、閉店後の「名鉄百貨店」跡地を、仮設イベントや若者・学生の実験的な活動の場として活用し、再び“行く理由のある場所”をつくり出すのです。

 名古屋の強みは、その派手さではなく暮らしやすさにあります。家賃や生活コストは大都市としては抑えられ、通勤時間も比較的短く済んでいます。産業基盤は強く、雇用も安定。そして、都市の魅力は駅前だけにあるわけではありません。開発の停滞を都市の後退と捉えるのではなく、生活が多様な魅力にあふれるよう一点のみに集中しない都市構造を築き、人口流出を防いで、住環境として“選ばれる街”をつくる。

 大型の再開発に頼ることだけが、完成した街への道ではないと考えます。
(2026年 3月号掲載)

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