<<著者インタビュー>>
知れば知るほど得する税金の本(知的生きかた文庫)
税制改正の時代に必要なのは「制度」よりも「考える順番」
─出版から10年以上経過し、今回改訂された理由は何でしょうか。
初版が出て以降、消費税の引き上げやインボイス(適格請求書)制度の導入などの改正が積み重なり、サラリーマン層も税金の知識が欠かせない時代になりました。そうした変化に対応する形で、これまで何度か改訂を重ねてきました。税金に関する本はいくつか書いていましたが、多くは経営者向け。一方で、サラリーマンや地主の方々に向けて、所得税だけでなく、消費税、法人税、相続・贈与まで含めて「全体像」を整理した本は少なかったため、根強い支持を受けているのだと思います。
─この10年で、税制はどのように変わってきたと感じていますか。
全体としては、相続税を中心に「厳しくなっている」という印象です。贈与の持ち戻し期間が延びたり、いわゆるタワーマンション節税が見直されたりと、従来の対策がそのまま通用しなくなっています。これからは、感覚的な節税ではなく、税金をしっかりと意識しながら不動産経営や資産管理を作っていかないと、手元に残るお金は確実に減っていくでしょう。
─本書の中で最も知ってほしいポイントを挙げるとしたら。
地主の方にとっては、やはり「相続と贈与」の章ですね。毎年の税金を抑えることも大切ですが、最終的に一番大きな影響が出るのは相続です。特に重要なのは、節税テクニック以前に「自分の資産の現在地を把握すること」。どんな資産を、どれだけ持っていて、万が一のときにどの程度の相続税がかかるのか。ここを把握していないまま対策を始めても、本当に効果があるのか判断できません。
─相続対策を始めたい地主は、何から始めるべきでしょうか。
まずは資産の棚卸しです。固定資産税の課税明細や金融資産を整理し、概算でいいので相続税の試算をしてみる。次に、その資産や土地を将来どうしたいのか、誰に引き継ぎたいのかという「ゴール」を明確にそこに向かって少しずつ資産を移していく。急激な対策ではなく、計画的に進めることがリスクを減らします。
─相続についてあまり考えたがらない人も多いですね。
相続はどうしても「自分が死ぬこと」を考えなければならず、避けたくなるテーマです。ただ、そこから目を背けると、困るのは残された家族です。嫌なことを少しだけ想像し、資産の現在地と将来像を整理する。そのスタートを切るための材料として、本書を役立ててもらえたらと思います。
著者プロフィール
出口秀樹(でぐち・ひでき)

税理士/米国税理士(EA)。1991年北海道大学文学部卒業。98年に出口秀樹税理士事務所を開所。2005年、小樽商科大学商学研究科修了。中小企業の税務・会計・経営支援から個人の税務対策まで幅広く手がける。著書に「事業存続のためのM&Aのススメ」(共著)ほか。
知れば知るほど得する税金の本(知的生きかた文庫)

著者:出口秀樹
出版社:三笠書房
価格:1100円(税込み)
概要
「103万円の壁」や子育て支援、特定親族特別控除、相続・贈与の見直しなど、税制はこの10年で大きく姿を変えてきた。本書は、累計18万部を超えるロングセラーを、最新の税制改正を踏まえて全面アップデートした一冊だ。制度の断片的な解説にとどまらず、「知らないことで損をしないために、何から考えるべきか」という判断の順序を、やさしい言葉と具体例で整理している。
(2026年3月号掲載)






