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融資を2段階に分けて戦略を立てる 事業性融資を利用し融資枠を突破
東京都と神奈川県を中心に賃貸経営を行う信太純オーナー。2007年に購入した1棟目を皮切りに、これまで20棟以上の物件を取得してきた。不動産投資の初めからスムーズに不動産を購入できた理由は「2段階の融資」を理解して活用したことにあるという。
信太純オーナー(東京都品川区)

2段階の融資
第1段階は、個人信用情報を使った融資だ。会社員であれば年収倍率をベースに、一定規模まではアパートローンを活用した資産拡大がしやすい。よくパッケージローンと呼ばれているものは、会社に勤め、給与を得ている人が対象の商品で、多くは『年収の何倍まで』といった形で融資上限が決められている。
しかし、「この第1段階には必ず限界が来ます」と信太オーナーは言う。年収をベースにしているため融資上限額が決まってしまい、そこを超えるには年収を上げる必要がある。しかしそれはそう簡単なことではない。
そこで考えるのが、融資の第2段階として「プロパー融資」を活用することだ。プロパー融資とは、金融機関が独自基準で企業へ直接行う融資のことで、信用力次第で低金利・好条件で資金調達ができ、融資限度額もないものだ。主に経営実績のある法人で、財務内容が良好な企業が対象になるといわれている。まれに個人に対しても個人事業主としての事業性を評価して融資されることもある。
「第1段階の融資で止まっている人が多いのかなと思います。その融資枠の限界を突破するためには、プロパー融資を考える必要があります」(信太オーナー)
第1段階を利用し投資開始
信太オーナーは07年、1棟目として横浜市に12戸の木造新築アパートを購入。取得金額は約1億2000万円で、ノンバンク系の金融機関から95%ローンを借りた。2棟目は東京都杉並区に6戸の木造新築アパートを購入。取得金額は7000万円で、地方銀行から90%ローンを借りた。その後3棟目として東京都品川区に1億円の重量鉄骨造マンションを取得。これも90%ローンを借りることができた。
年収が最終的に2000万円近くまで伸びたこともあり、第1段階で3億円弱の融資を受けることができたが、さすがにここまでが第1段階の融資の限界だった。
その後の東京都練馬区の9戸の重量鉄骨造マンションの購入において、融資付けに苦労したという。取得価格1億3000万円で、これまで融資をしてくれた金融機関に打診をしたが拒否された。既存の借り入れがすでに第1段階の上限だったことが要因らしかったという。
そこで信用金庫や信用組合に相談しようと考えた信太オーナーは、不動産投資を検討しているエリアの信金・信組に100件以上電話をかけて融資を受けられないか相談した。すると、ある信組が融資を承認してくれたという。明確な理由はわからないが、その時までに取得した物件の賃貸経営の事業性を評価してくれた可能性が高く、「事業性融資」を個人事業主として受けることができた。
この融資後、信太オーナーは自分の個人信用情報を照会。すると、このプロパー融資で借り入れた融資情報についてだけ掲載されていなかった。ここで改めて個人信用情報にひも付かない、事業性を評価するプロパー融資の重要性に気付いたという。
法人で融資を受ける
前述の練馬区のマンション取得時には個人事業主としてプロパー融資を受けたが、これはあくまで個人名義。今後のことを考えると、法人としてプロパー融資を受けて不動産を購入していくことが拡大のカギとなる。3期分の決算書を用意するため、法人はあらかじめ設立していた。それと同時に、賃貸経営の実績をつくるための工夫をしていた。
「法人として賃貸経営をするためには三つの方法が考えられました。一つ目は個人の物件の管理を同法人に委託する方法、二つ目は個人所有物件を借り上げサブリースで転貸する方法、三つ目は法人で不動産を保有する方法です。法人の最初の3期分については個人所有の物件を同法人がサブリースする形で、3期分の決算書と賃貸経営の実績の両方を用意しました」(信太オーナー)
12年後半には5棟目として東京都大田区にある築27年の11戸の鉄筋コンクリート造マンションを取得。価格は1億7000万円だった。練馬区の物件で事業性融資として個人に貸し付けてくれた金融機関に相談すると、法人への融資も承認された。「決算書の内容および、賃貸経営の実績があることが理由だったのではないか」と信太オーナーは言う。結果的に大田区の物件取得時は、法人へのプロパー融資として融資期間25年の好条件でフルローンを借りることができた。
また信太オーナーは、個人で購入した前述の練馬区の物件について法人で買い取る提案をし、その買い取り資金の融資も同信組に相談。無事に承認され、同法人は2棟の物件を保有することに成功した。
ここまでくると賃貸経営を行っている法人としての評価が確立され、融資も下りやすくなる。融資の上限もないため、事業として問題ないと認められれば買い増していくことが可能だ。13年にさらに2棟を取得した後、14年に8棟目を購入。8棟目の取得の際には新たな信組から融資を受けた。
またこれまで個人名義で購入した物件もすべて法人で買い取った。この時にもさらに別の信組から融資が下り、金融機関との付き合いの幅が広がったことで融資を受けやすくなる好循環をつくっていった。
「投資家」ではなく「事業者」
金融機関に納得してもらえる数字を意識するのはもちろん、信太オーナーは、一事業者として見てもらうために金融機関との付き合い方に細かな工夫をしている。
例えば、①事務所を構え、銀行担当者の来訪への対応ができる体制をつくる②物件単体ではなく、会社としての年間の取得方針・運営方針を説明する場を設ける③「この物件はいくらもうかるか」ではなく「会社としての賃貸事業をどう継続していくか」を話すなどだ。
「銀行に『貸してください』とは言いません。『こういう事業をやっています』と説明するだけです」(信太オーナー)

金融機関との打ち合わせなどを行う事務所
融資は担当者や支店長によって大きく対応が変わることもあるというが、会社の事業を十分に理解してもらえば、担当者が異動して変わっても問題なく関係は続くという。
こうした融資戦略もあり、順調に物件取得を行ってきた。物件の取得回数は現在に至るまでに20回以上に及ぶ。売却も適宜行って資産の組み換えをしながら、現在は一棟物件と区分マンションを合わせて約83戸を運営している。
(2026年 3月号掲載)






