管理会社の担当者は大切なパートナー。多くの物件の管理を担当しているプロとしての経験を自分の物件に生かしてもらえることも多いだろう。ただ、管理会社では多くの物件の管理を行っているため、家主自身や物件を印象づけることや、管理担当者に快適に働いてもらう工夫が肝心だ。今号では、良好な関係を築いている家主と管理担当者へのインタビューや、管理担当者の本音座談会の様子を紹介する。ぜひ信頼関係構築のヒントにしてほしい。
切磋琢磨し合う賃貸経営 毎年の夜景が成長の象徴
小山力大オーナー X 上田正人氏
――2人の出会いを教えてください。
小山力大オーナー(以下、小山):2010年頃、知り合いの家主が「きめ細やかな管理をしている人がいる」と引き合わせてくれたのが、上田さんとの初めての出会いです。勉強熱心な人だと感じたのを覚えています。「北海道大家塾」の勉強会で顔は知っていました。その後、11年竣工の新築アパートから物件管理を依頼したのです。
上田正人氏(以下、上田):そうでしたね、私が勤めていた会社から独立する直前に新築物件を任せてもらいました。もう10年以上前のことです、懐かしいですね。
小山:そのアパートの竣工は11月で、繁忙期ではなかったため最初は募集に苦労したんです。そんなときに近隣にチラシを配ってくれたのは上田さんでした。さらに、上田さんはもともと仲介の営業の経験もあったので、仲介事業者の営業に刺さることは何かを知っていたんです。
上田:札幌はほかのエリアより、駅前の仲介店舗に行って部屋を決めるケースが多いと感じます。管理会社が仲介事業者にいい条件を示すことで、入居が決まりやすくなるのです。仲介会社の目線で決めやすい部屋、募集の条件などを心掛けました。
――上田さんのどんなところを信頼していますか。
小山:上田さんは本当に細やかです。クロスの色柄、コンセントプレート一つにも相当こだわってくれます。原状回復のときも2人で部屋に行って、床やクロスのカタログを見ながら話し合います。コンセントプレートなんて数百円。そのこだわりように驚くとともに、信頼感が深まりました。
上田:家賃を下げないように内装や外観を保つのがポイントです。お互いに意見を出し合っていい部屋をつくり上げるのは自分にとっても勉強になります。
小山:実は私は斬新な内装を作りたくなってしまうたちなんです。これに対して、上田さんはすごく慎重。ブレーキ役になってくれるのでバランスが取れます。自分にないものを持っている点も素晴らしいです。
上田:たまに意見は割れるけれど、お互いに言いたいことは言い合える関係ですね。空室対策でも、トラブル対策でも、言うべきことはちゃんと言う。
小山:14年ごろ、上田さんが反対したのに民泊をやってみたことがありました。結局トラブルが頻発して10カ月で撤退してしまいました。何でもイエスと言ってくれる人より、きちんと反対してくれる人は貴重だと改めて思いましたね。
上田:私の意見が正しかったのはあくまで結果論。このときも、2人でいい経験を積むことができたと思っています。
小山:そんな上田さんから管理会社として独立したいと相談を受けた時には、「実力のある人のスタートを助けたい」と思い、満室プロジェクト(札幌市)創業の際に協力しました。
――小山オーナーのどんなところに「家主力」を感じますか。
上田:管理会社は、家主と入居者の間で板挟みになってしまうものです。それを理解して、必要なときに行動してくれる家主に対してはしっかり仕事でお返しをしたいです。一方的に私たち管理会社に何とかしてほしいと思っている家主は多い。どんなに必要であっても、表に立ちたくない人もいるものです。しかし小山さんは、こちらの状況に応じて動いてくれます。
小山:ある程度お任せしたほうがいいところと、家主も動く必要がある場面があります。
上田:そうですね。例えば、数年前、トラブルを起こす入居者に退去してもらったことがありました。なるべく小山さんに迷惑をかけたくなかったのですが、訴訟を検討する段階になると管理会社だけでは対応できません。小山さんはすぐに対応してくれてありがたかったです。
小山:こちらこそ。上田さんが夜中に警察署に行ってくれて心強かったです。自分でも経験のないトラブルだったので、自主管理ではなくて本当に良かったと思いました。
上田:人間なので、こちらのことを理解してくれる人にはお返しがしたくなります。やっぱりどこかで気持ちの差が出てしまう。それも家主の経営力だと思います。
――今後の目標について教えてください。
小山:13年、独立する直前の上田さんを、東京の「賃貸住宅フェア」に誘って一緒に行ったんです。その後「パークハイアット東京」の52階のバーで東京の夜景を一緒に見ながら食事をしました。それからほぼ毎年、賃貸住宅フェアの日は今年もここに来られたことに感謝して、夜景を眺めながら互いの抱負を話し合っています。
上田:独立直前だったので東京に行くのも大変でした。小山さんが少しお金を出してくれたほどです。でも、誘ってもらえてうれしかったし、来年からも毎年この光景を見たい、毎年しっかり事業を成長させていかなければと強く思いました。
小山:創業から10年、上田さんの成長を見るのはとても楽しかったです。創業時はオフィスが古い木造アパートの一室で本当に寒かった。それが今では自社ビルを所有されています。今後も、もっと入居者や家主に喜ばれる会社になってほしいし、協力していきたいです。
上田:今でも十分で、本当にありがたいです。付き合いも長くなってきて少し年も取りました。これからも2人とも健康で、より幸せになっていきたいです。
上田:独立直前だったので東京に行くのも大変でした。小山さんが少しお金を出してくれたほどです。でも、誘ってもらえてうれしかったし、来年からも毎年この光景を見たい、毎年しっかり事業を成長させていかなければと強く思いました。
(2024年3月号掲載)
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