【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:特別座談会(6)

賃貸経営リフォーム・リノベーション

「場のデザイン」から「共感不動産」を考える

【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:特別座談会(5)に続き、第二弾カレッジ「場のデザインから共感不動産を考える」を総括して、九州産業大学准教授・信濃康博氏 、スペースRデザイン・本田悠人氏、𠮷原勝己オーナーの3者で実施した座談会をレポートする。今回が同座談会レポートの最終回。

***山王マンションは時代を映す鏡***

𠮷原:今後、リノベーションやデザインの世界が、20年後にAI(人工知能)の力を活用してどのように進化していくのかも非常に興味深いところです。AIが加速させる部分もある一方で、人間が持つ感性や共感をどのように補完していくのかが課題になりそうです。

信濃:AIが設計やデザインを自動化していく流れの中で、設計者やデザイナーの役割が変わっていくかもしれません。今まではプロフェッショナルがつくり上げるものであったリノベが、住む人自身がデザイナーとなり、空間を自由にカスタマイズしていく時代が到来するかもしれません。その際、AIは「設計支援ツール」としての役割を担い、個人が表現したい「自分らしい空間」をより簡単に実現する手助けをする存在になるのではないでしょうか。
また、これまでのリノベや共感の仕組みがAIによってさらに「分散」「多様化」し、「大衆化」していく可能性もあります。これまでデザインにかかわってこなかった層や、専門的な知識を持たない人たちが、AIを使ってリノベのデザインプロセスに参加できる時代が来るかもしれません。
そのような状況になると、AIによって「共感の枠組み」も変わるかもしれません。しかし結局のところ、AIはツールであり、設計者やユーザーが「どう活用するか」で未来のデザインやリノベーションの在り方が決まるでしょう。AIがもたらす加速化とともに、いかにして人間の感性や共感を大事にした場づくりが続いていくのか、これからの時代に期待が膨らみます。

𠮷原:これまでつくった部屋の履歴や写真を基に、3Dモデルでバーチャル空間をつくり出し、さらにNFT(非代替性トークン)を使ってバーチャル住民を入居させるという、現実世界とバーチャル世界が交錯する新しい居住スタイルなんかも出てくるかもしれませんね。3Dで仮想の「山王マンション」を再現し、バーチャル住民をNFTで入居させることができれば、物理的な制約を超えた体験が可能になります。
そうすると、全く新しいコミュニティーの形が想像できます。さらに、NFTを使って「唯一の部屋」というアイデンティティーを持たせることができれば、バーチャル空間内での資産価値や所有感も非常に高まるでしょう。

信濃:このバーチャル住民の世界は、田舎に住みながら都会的なライフスタイルを体験したい人や、逆に都会の喧騒から離れた暮らしを求める人々にとっても魅力的です。現実世界での限られた物理的スペースやリソースを補完するような新しい住まい方、働き方の形態を提供することができそうです。

本田:また、現実の「山王マンション」の異質で個性的なデザインがそのままバーチャル空間に反映されることで、物件自体が「唯一無二」の価値を持ち続けますね。従来の大量生産的な賃貸物件では味わえない、個々の部屋に固有のストーリーがあるからこそ、このバーチャル・リノベのコンセプトがより説得力を持ち、魅力を発揮できるのでしょう。

 

***𠮷原オーナーのまとめ***

山王マンションというのはまさに「時代を映す装置」であり、「福岡の人々のマインドを反映する記憶を持った物件」としての役割を果たしているように思います。
この建物は、時代に応じてリノベを行い、その時代の人々のニーズや価値観を先取りして形にしてきました。そして興味深いことに、その当時のピークを超えて今でもなお多くの人々に支持され続けているという現象が起きています。
山王マンションはこれからも時代の変化を受け入れ、それに応じた部屋づくりを行っていくことで、新しい時代の人々のマインドに共感し続けるでしょう。次のリノベによって、また新しい福岡の人々の価値観を反映した空間が生まれ、それが新たな支持層を引き寄せるサイクルが続いていくのだと思います。
まさに山王マンションの使命は、「変わりゆく時代の中で、人々のライフスタイルや価値観を反映する空間を提供し続けること」であり、その役割を担い続ける偉大な建物としての存在感を持ち続けていくのでしょう。
今日は山王マンションが、ただ物理的に残すべき建物ではなく、時代の変化に対応し続ける「可変性」や「共感」を持つ場としての重要性を持っているということを再確認できました。それが冷泉荘や他の建物にも共通する価値であり、これからもその価値を持ち続けることができる建物が、今後の社会の豊かさや可能性を探る「ネバーエンディングストーリー」として続いていくのでではないでしょうか。
建物が持つこの可変性と対応力があれば、どんな時代や人々のマインドの変化にも柔軟に適応できる。それを体現してきた山王マンションは、これからも進化を続けていきますし、設計やリノベというものが「完成」で終わらないという事実が、より強く認識されました。
今回の座談会で明らかになったのは、建物はただのハードではなく、その背後にある人々の暮らしや社会の変化を反映し続ける「生きた空間」であり、それこそが山王マンションが持つ大きな使命であるということです。今後も、新しい扉が開かれ、さらなる発見が待っていることでしょう。

(2025年2月公開)
関連記事↓
【電子版連載】次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー:特別座談会(1)

 

この記事の続きを閲覧するには
会員登録が必要です

無料会員登録をする

ログインはこちらから

一覧に戻る

購読料金プランについて

アクセスランキング

≫ 一覧はこちら