新聞販売所をシェアハウスにリノベし投資利回り33%

賃貸経営リフォーム・リノベーション

Regeneration ~建物再生物語~

新聞販売所をシェアハウスにリノベ
既存躯体を生かし利回り33%実現

BORDERLESS HOUSE池袋

JR山手線大塚駅。そこから都電荒川線の路線沿いを10分ほど歩いたところに、さまざまな人々が住む建物がある。国籍や性別を超えた11人が共同生活を送る「BORDERLESS HOUSE(ボーダレスハウス)池袋」だ。
 元は新聞販売所だが、閉鎖から5年ほど空き家のままだった。建物は築33年の鉄筋コンクリート造で、耐震性も問題なし。まだまだ使用できる物件だったため、所有者はその活用方法を検討していた。そこに、リノベーションを絡めたシェアハウス事業を提案し、物件運営会社に採用されたのがボーダレスハウス(東京都台東区)だ。

ボーダレスハウス(東京都台東区)
物件開発責任者 李昌信氏(39)

 同社は「多様なアイデンティティーとつながるコミュニティーをつくり、多文化共生への架け橋となる担い手と仕組みを築く」ことを信条に運営を行う。
 「今回は改修費用の安さも選ばれた理由ですね」と物件開発責任者の李昌信氏は語る。
 同物件の改修費用は2000万円弱という。「当社のシェアハウスは『交流』がコンセプト。その実現に向けてリノベをしました」(李氏)。具体的には、交流促進のためにリビングなどの共用部を広く取りたいと考えたが、ここで元々の新聞販売所の構造が生きた。1階の印刷機と仕分け場が設置された広い空間を、そのままリビングに転換することができたのだ。また配達バイク置き場だった場所には人工芝を敷き、筋トレなどをするジムとしての利用も可能な多目的スペースに変えた。

 

 そして、当時は作業員の宿舎だった上の階の個室も生かした。元々各個室には水回りはなく、共同のシャワー室が1部屋あるだけだった。シェアハウスであれば水回りは共同でいい。同物件は入居可能人数11人なので、6人に一つの同社基準に照らし、シャワー室は1部屋増やしたのみ。またシェアハウスは「体験」を付加価値にしているため内装はシンプルにまとめた。このように既存物件を最大限活用し、工事費用を抑えることができた。


 この結果出来上がった部屋は、水回りがなく広さも約7㎡。一見客付けが難しそうだが、募集開始から1カ月ほどで満室になるという人気ぶりだ。「交流」という世の中の隠れた需要をすくい上げた。
 この付加価値は金額にも大きく反映され、近隣ワンルームの家賃相場である7万3000円で貸せているという。その結果、同物件では満室時の利回りは、約33%になった。
 「新聞販売所とシェアハウスは構造上の相性がいい。新聞販売所の空き家問題は、これからも発生する思います。こういった解決方法もあると知ってもらい、多くの物件を手がけられたらいいですね」(李氏)

リビングには入居者たちが自由に使える掲示板が。取材時には誕生日を祝われていた人もいたようだ

(2025年7月号掲載)

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