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<<話題のスポット>>
築52年の風呂なし木造アパートをリノベ
シェアハウスと店舗が地域活性の拠点に
相続したものの積極的に建て替えができず、かといって手放したくもない。そうした空室だらけの築古木造アパートを店舗付きシェアハウスにリノベーションした物件がある。下町情緒あふれる昔ながらの街並みの東京・谷中で人気のスポットになっている。

▲1階は店舗、2階はシェアハウスのヤナカアパートメント
ジェクトワン(東京都渋谷区)
アキサポ事業部 山下航平チーフ

徳川慶喜や渋沢栄一など、数多くの歴史上の人物や偉人が眠る東京・谷中霊園。そのすぐ脇に「ヤナカアパートメント」はある。築52年の木造アパートをフルリノベして2024年にオープンした物件で、1階は5店舗とレンタルギャラリー、2階は8戸のシェアハウスになっている複合施設だ。平日の夕方にもかかわらず、敷地内には建物の写真を撮る人や、コーヒーを飲む外国人観光客らの姿が見られる。だが、以前は人通りも少なく寂しい場所だったという。
「オーナーから問い合わせがあった当時、このアパートは12戸中11戸が空室。残りの1戸もオーナーが仕事部屋として使っているだけでした」。空き家のリノベや管理を手がけるジェクトワンの山下航平チーフはそう振り返る。
JR山手線日暮里駅から徒歩6分という利便性のいい土地ではあるが、オーナーには積極的に建て替え、あるいは売却する気持ちはなかった。幼少期から知っているアパートへの愛着があり、できれば何かしらの形で活用したいと思ったためだ。
そう考えたオーナーからの相談を受け、同社が手がける「アキサポ事業」として15年間一括借り上げをする形でリノベから管理・運営までを引き受けた。
水回りの設備を最小限にするアーティストをターゲットに
人が住まなくなって久しかった室内は損傷も大きかった。
「内装も建具も、そのまま使える部分はほとんどなかったといえます」(山下チーフ)
さらにはもともと風呂なしのアパートだったため、工事のコストや手間から考えると一般的な賃貸物件へのリノベは効率が悪い。そこで、共同シャワーという形をとることができるシェアハウスにリノベすることが決まった。
東京芸術大学が近くにあるため、学生やクリエーターを入居者ターゲットにした。テーマは「アトリエコリビング」。共用リビングに作業スペースを用意したり、ダイニングの壁に作品を掛けられるような造作をしつらえたりした。お互いにいい影響を及ぼして、作品作りに生かしてもらえる住環境を提供する。

▲シェアハウスの共用スペースにある作業場も魅力の一つ
このターゲット設定は見事に当たった。現在は学生から20代後半の芸術家を含め幅広い層が入居している。家賃は共益費込みで7万円前後。この家賃には1階にある共用部分の利用料も含まれている。こうした価値付けもあって、入居待ちもできる人気物件になっている。
店舗があれば人流が生まれる 目指すは地域の文化交流拠点
アパート全体をシェアハウスにする案もあった。だが1階部分を店舗にしたのには訳がある。それは、庭だ。敷地内には都内にしては珍しい広さの庭があり、それを活用できないかと山下チーフは考えた。物件の余白ともいえるスペースを使って入居者以外の人を呼び込むことができれば、地域の交流拠点になるのではないかという狙いがあった。
そこで、1階部分は店舗スペースにすることにした。各店舗20~24㎡で、初めて実店舗を出店するスタートアップ向けだ。もとより、この近辺は「谷根千」と呼ばれるエリアで、特に近年では物件の古さを生かした人気の店舗も多い。ヤナカアパートメントはこうしたエリアでの出店の足掛かりとなる。
「工事中に2度内覧会をしたのですが、気に入ってその日のうちに契約していく人もいたほどです」(山下チーフ)
- ▲人の流れをつくるため、バラエティーに富んだテナントを誘致
- ▲1階を店舗にしようと思ったのには中庭の存在が大きい
1階の5店舗も、2階の8戸もすべて満室経営中。耐震改修を含め、リノベには3000万円超かかったが、十分なリターンが取れている。
ただ持っているだけでは固定資産税の支払いだけでマイナスになっていた築古物件だが、アキサポ事業によって、家賃収入を得られるだけでなく地域活性の拠点になることができた。
「オーナーも『この前、お店に行列ができていたね』とうれしそうに話してくれます」(山下チーフ)
(2026年3月号掲載)






