屋上防水は建物の寿命を延ばすために重要だ。そのため適切な時期に点検・修繕を行うことが必要になってくる。それらのタイミングや防水方法の特徴、見積もり依頼時のポイントについて専門家に聞いた。
雨漏りしている建物に適した二つの工法
どの工法が雨漏りに対して効果が期待できるのか。まずは建物との相性から見てみよう。主流である塩ビシート防水とウレタン防水を比べると、塩ビシート防水は軽量鉄骨造の建物に適しており、一般的にウレタン防水より耐久年数が長い。ウレタン防水はRC造や木造など多くの建物に適応できて使い勝手がいいのが特徴だ。
すでに雨漏りしている建物には、塩ビシート防水機械的固定工法もしくはウレタン防水通気緩衝工法が適している。塩ビシート防水機械的固定工法は、絶縁シートをディスク盤で下地と固定させ、その上に塩ビシートを張る工法。シートが2枚張られているため雨漏りしにくい。ウレタン防水通気緩衝工法は、通気性と緩衝効果を持つシートの上に、ウレタン樹脂を何層も重ね塗りする工法だ。
このほか、塩ビシート防水の工法の一つに最長30年持つタイプの高耐久仕様があり、一度で防水対策を終わらせたいという場合に選ばれる傾向がある。

家主自ら行う防水工事の試み
「地方では防水工事会社が不足しており、競合が少ないために見積額も高くなりがちで困っている家主がいます」と語る福島代表理事。2025年4月から福島代表理事の監修の下、家主自ら防水工事のDIYをする試みが兵庫県で始まった。今後の動向に注目だ。

▲塩ビシート防水機械的固定工法による施工
いい見積もりは材料や工法名が詳しい
次に見積もり依頼時の注意点を紹介する。
家主は、依頼の前にあらかじめ予算や施工範囲などの要望をメモにまとめること。竣工時の図面も用意し、併せて事業者に渡して相見積もりを取るといい。依頼条件を同じにすることで比較がしやすくなる。
複数の事業者から見積もりを取れたら、それぞれを見比べてみよう。これまでに1万2000枚以上の見積書を見てきた福島代表理事によれば、防水の専門性がある事業者とそうでない事業者とでは見積もり内容に大きな違いがあるという。
専門性がない事業者の見積書をA、専門性がある事業者の見積書をBとしてポイントを見ていく。
- A:悪い例
- B:良い例
まずは金額の安さだけで判断しないこと。金額が安いと、本来なら施されるべき工事が項目に入っていないことが多い。
次に項目の数と内容。AはBに比べて項目の数が少なく、それぞれの内容が漠然としている。Bは、Aよりも項目の内容に使用する材料や工法名が詳しく書かれている。
項目に下地の補修、立ち上がり(屋上を囲む垂直に立ち上がった部分)の上部に設けられる笠木の脱着、入り隅部分、ドレン改修などに詳しく触れているかも見ておくといい。
笠木の下にも防水層があり、経年劣化している可能性があるため、外して工事をする必要がある。入り隅部分とは屋上床面と立ち上がりが交わる部分。隙間が生じやすく、建物の揺れや寒暖差で破断もしやすい。シーリングで破断を防ぐことができる。ドレン塗装は一時的に表面をきれいにする対応なので、根本的に雨漏りを止める工事にはならない。改修用ドレンを設置すれば適切に排水機能を確保できる。
見積書に保証年数が書かれているかどうかも注目しよう。Aには記載がない。Bのように工事完了後の点検についても書かれていれば、より親切だ。
事業者からは少なくとも見積もりを2パターン提示してもらうといい。屋上防水の方法には、それぞれに長所と短所がある。建物の構造や工事に対する自身の要望に最適なものを複数から選べることは、家主にとってもメリットが大きい。
事業者選定においては、屋上防水専門の会社かそうでないかもポイントになる。福島代表理事は次のように語る。「塗装業者やリフォーム業者が屋上防水を手がけることがありますが、これらの会社は美観の向上や建材の保護を得意とする一方、防水の専門家ではないため、雨漏りの修理や防止に関しては十分な経験や技術を持たない場合があります。見積もりを依頼した事業者が防水専門業者かどうかを知るためにも複数の相見積もりを取り、雨漏りに適した工法の提案か、必要な項目が入っているかなどを見てください」
(2025年6月号掲載)
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