Vol.6 面積により変わる色の見え方 思い描いた色彩を実現するには
イメージとは異なる仕上がり
今回は、色選びのヒントについて話します。
「見本帳で選んだ色が、実際の仕上がりでは全く違う印象になってしまった」。そんな経験が私にはあります。
実家で家を新築した際に、玄関を薄いグレーのタイルにしようということになりました。色見本帳は上品な感じで「とてもいいね」と選んだのですが、実際の施工後にはかなり明るいグレー、いや、ほとんど白になっていました。色見本帳を当ててみれば確かに同じ色。しかし、タイルをいくつも並べると色が異なって見えています。
実は、これには「面積効果」という色の特性が大きく影響しています。面積効果とは、人間の目の構造上、色の面積の大きさで色が異なって見える現象です。色の面積が大きいほど、明るい色はより明るく鮮やかに、暗い色はより暗く濃く見えます。つまり、小さな色見本帳で見た色が、壁一面に塗られたとき、全く異なった印象になることがあるのです。

色見本帳は大きめのものを準備する
選ぶ際に気を付けること
大きな面積の色を選ぶ場合に、押さえておきたいのが以下の三つのポイントです。
一つ目が、小さな色見本帳だけでなく、A4サイズなどの大きな色見本帳をメーカーから取り寄せ、実際に物件に当てて確認すること。可能であれば1㎡以上の試し塗りをおすすめします。より大きな面積のほうが色の変化がわかりやすいからです。
二つ目は、選んだ色だけでなく、もう一段明るい色、暗い色など複数の色見本帳を用意することです。特に壁に複数の色を使う場合には、それぞれの色を組み合わせた状態で比較するといいでしょう。
壁面に並べる際には、各色の間を少し空けて置いてください。複数の色を組み合わせる場合には、同じ色は隙間なく並べ、ほかの色とは間を空けます。なぜなら色は面積効果だけでなく、色と色の組み合わせによる対比効果でも異なる見え方をすることがあるからです。
最後に、朝、昼、夜、晴天、曇天など時間帯や天候などによる見え方の違いの把握も大切です。
以上のポイントを意識するだけで、思い描いた色の選択がしやすくなります。
どんな人が入居してくれるのかと想像しながら色選びをするのは楽しい作業だと思います。色を用いて差別化を図り、満室に導くこともできるでしょう。物件の魅力を引き出す色選びの一助となりましたら幸いです。
眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。
(2025年 6月号掲載)






