Vol.7 明るさを生み出す黄色
室内の暗さ、狭さなどの悪条件補う
部屋の第一印象を良くする
「日当たりの悪さをどうにかできないか」という問題は、よく耳にします。特に1階の部屋や、北向きあるいは隣家が接近している物件では、内覧時の第一印象で損をすることも少なくありません。構造上、窓を増やすことは難しいし、大がかりなリノベーションとなればコストもかかる。そんなときに役立つのが「色の力」です。
色には、空間の印象を大きく変える力があります。その中でも黄色は、光を受けてよく反射し、部屋全体を明るく見せてくれる色の一つ。白に近いペールイエローやバニライエローなどを壁の一面に取り入れるだけでも「なんだか明るく感じる」と思わせる視覚効果が得られます。照明の光も部屋の中で柔らかく広がり、窓からの日差しが生み出す以上の「明るい印象」をつくることができるのです。

柔らかい色みの黄色を使用した部屋
こうした色の工夫は、コンパクトな住戸、例えば単身者向けのワンルームや1Kの物件などで特に効果的です。部屋の面積が限られている分、ちょっとした工夫が空間全体の印象を左右します。「暗くて沈んだ印象の部屋」と「なんだか明るくて元気が出そうな部屋」であれば、同じ広さや賃料でも選ばれるのは後者です。
自然に溶け込む黄色を選ぶ
ただし、黄色なら何でもいいわけではありません。例えば、工事現場の注意喚起に使われるような、警告を発する役割を持つ原色の黄色は、高い視認性を持ちます。一方でその色を室内に使うと、人によっては落ち着かず、心理的に不快感を与えてしまうこともあります。
また黄緑がかったライム系の黄色も、状況によっては古びた印象や清潔感の欠如を感じさせることにつながる場合があります。
さらに、くすみ過ぎたマスタード色は、築年数がたった物件では「老朽化した印象」を強めてしまうこともあるので、注意が必要です。
室内用の色として選ぶべきなのは、「光を受けて優しく返す黄色」です。空間に自然と溶け込み、明るさと温かみのある雰囲気を醸し出します。黄色には「気分が明るくなる」「親しみを感じる」といった心理効果もありますので、内覧時の第一印象を良くする静かな後押しになります。設備投資に頼らず物件の魅力を底上げする方法として、色の工夫は意外と大きな力を持っています。
眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。
(2025年 7月号掲載)
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