建物の構造から考える土地活用、賃貸住宅をRC造で建てるメリットデメリット

賃貸経営住宅設備・建材

 「遊休地を活用して賃貸住宅を建てたい」と考える人が最初に思い浮かべるのは木造アパートかもしれません。一方で「活用したい土地が防火地域内にある」「土地の面積が広い」「店舗併用型の賃貸住宅を検討している」といった場合であればRC造が候補になるでしょう。

 ここではRC造の遮音性や耐震性、耐用年数などの基礎知識を振り返りつつ、賃貸住宅を建てる際のメリットとデメリットを解説します。

RC造の工法と耐用年数をおさらい

工法は中低層向けと高層まで対応できる2種がメイン

 RC造とは、鉄筋コンクリート造(Reinforced Concrete:レインフォースドコンクリート)のことで、鉄筋で組んだ柱や梁などにコンクリートを流し込み固めた建築物です。

 そんなRC造において、中低層から高層まで対応できる工法が「ラーメン工法」です。「ラーメン」は、ドイツ語で額縁や枠を意味しています。重量鉄骨造でも用いられるこの工法はその名のとおり、鉄筋を入れて固めたコンクリートの柱や梁を接合することで強い「枠」をつくり建物を支える造りです。耐震性が高く、ドアや窓の位置・大きさは自由に決めることができますが、室内に柱や梁が張り出してしまうため圧迫感を与えることもあります。

 もう一つの工法として、主に5階建て以下の中低層向けに用いられる「壁式工法」があります。四方の壁、床、天井の計6面で建物を支える造りで、WRC造(壁式鉄筋コンクリート造・Wall(ウォール) Reinforced Concrete)とも呼ばれます。

居住スペースに柱が大きく出ないため、専有部分のデッドスペースを少なくすることができます。ただ、壁自体が重要な構造体なので、ドアや窓の開口部を大きく取ることが難しく、間取りの変更もしにくいという面があります。

 

法定耐用年数は47年、推定寿命は60年以上

 国税庁によれば、RC造の法定耐用年数は47年です。

 ●RC造・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造のものの法定耐用年数

細目 耐用年数
 事務所用 50年
 住宅用 47年
 飲食店用 34~41年
 旅館・ホテル用 31~39年
 店舗用・病院用 39年
 車庫用 38年
 工場・倉庫用(一般用) 38年

※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」を基に地主と家主で作成

 法定耐用年数はあくまで減価償却などを計算する際に用いるために定められた数値です。

 一方で、建築学の専門家による試算では、RC造の寿命は68年とも、117年とも推定されています。外壁や屋上防水などのメンテナンスを適切に行っていれば、長期間の使用が可能なのです。

RC造の賃貸住宅は機能性の高さがメリット

遮音性の高さで騒音問題をシャットアウト

 RC造は、ほかの構造に比べて断トツの遮音性を誇ります。「音」は振動が空気や物を伝わることで届きますが、コンクリートは密度が高く、重さもあるため音が伝わりにくい建材です。特に壁や床などすべての面にコンクリートを使うWRC造では、より効果的に音を遮れます。だからこそ、楽器演奏や歌の練習ができる防音マンションの多くでRC造が採用されているのです。

鉄筋×コンクリートで揺れに強い

 骨組みに鉄筋とコンクリートを使っているRC造。コンクリートは圧縮する力に強く、鉄筋は引っ張る力に強いという特性があります。地震の横揺れには鉄筋の耐性で、縦揺れはコンクリートの圧縮耐性で支えるといったように、二つの資材で縦揺れも横揺れも対応できるのです。

 ただし、1階が店舗や駐車場になっていたり地盤が弱かったりする建物は、注意が必要です。

 

燃えないRC造、1000度前後でも強度維持

 建築基準法では、一定時間の火熱が加えられた場合であっても損傷などが生じない耐火構造としてRC造を認めています。

 鉄骨とコンクリートからなるRC造は、材質そのものが燃えることがありません。これにより、室内で発生した火災が隣家へ燃え移る延焼を防ぐことはもちろん、隣家から発生した火災による類焼も防ぐことができるのです。さらに、火災が発生した際に外壁温度が1000度前後まで達したとしても強度は下がりません。

 こうしたことから、火災保険の費用を低く抑えられるのもメリットの一つと言えます。

RC造の最大のデメリットはコスト

工期の長さがコストを押し上げる

 機能性に優れ、耐用年数が長いRC造ですが、最大のデメリットがコストの高さ。その大きな理由は工期の長さです。

 RC造は重量が重くなるため、地盤の状態によっては地盤改良や杭打ち工事の必要が出てきます。また一般的に、コンクリートが十分な強度を持つまで硬化するには1カ月程度かかるとされています。建物の階数にもよりますが、基礎工事を済ませ、鉄骨で枠組みをつくり、そこにコンクリートを流し込んで固めるという一連の作業で10カ月から1年程度はかかってしまうのです。工期が長くなれば当然、人工にんく代も比例して高くなりますし、その期間の家賃収入もありません。

 

建材価格・人工代など経済情勢に左右されやすい

 RC造の建築コストは、世の中の動きに大きく影響されやすい点にも注意が必要です。例えば、東京オリンピックや大阪・関西万博のように規模が大きいイベントの実施が決まると、その会場づくりのために鉄筋やコンクリートが多く使われます。工事業者、職人も同様です。需要が増大するために、価格の変動が大きくなってしまうのです。工期が長いRC造だからこそ、経済情勢がコストに影響しやすいと言えるでしょう。

大幅なリノベをしにくく、解体する場合は高コスト

 建物は建てて終わりではありません。配管類や設備機器、階段や共用部のメンテナンス費用も当然かかります。国土交通省が提供している「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、1K・10戸の賃貸住宅で30年間にかかる修繕費についてRC造は1戸あたり177万円、木造では1戸あたり174万円と試算しており、それほど違いはありません。一方で、RC造は入居者ニーズの変化に合わせてリノベーションしようと思っても、構造上、壁を取り払ったりドアの位置を変えたりといった間取り変更がしにくいというデメリットがあります。

 また耐用年数が47年のRC造の建物を新築で建てた場合、その「終わり」を迎えるのが半世紀近く先になります。解体して処分する場合、重機の使用や廃材の処理費用などがかかり工期も長いため、費用が木造の2倍程度かかるのが一般的です。さらに解体工事の規模が大きくなることで、周辺住民への騒音に対する配慮なども必要になります。

 

RC造のメリットデメリットを知って、納得のいく賃貸経営を実現

 遮音性、耐震性、耐火性に優れ、入居者満足度が高いRC造の賃貸住宅。機能の高さによって高い賃料を設定できるため、十分な収益性が見込めます。耐用年数も長く、機能はほぼ無敵に見えるRC造において、最大のネックが建築から解体までのコスト全般と言えます。特に土地を代々受け継ぐ地主の場合、新築時に最終的な解体費用までも考慮しておく必要があるでしょう。
(2025年10月31日更新)

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