最終回 色を観察し空間に取り込む
感覚を磨いて魅力的な物件づくりを
配色の力を育てる方法
この連載では、不動産経営と「色」の関係について、さまざまな視点から伝えてきました。「色のことはよくわからない」「センスがないと難しそう」そんなふうに感じていた人にとって、少しでもヒントになっていればうれしく思います。
色彩感覚は、観察と理解で養っていくことが可能です。最終回では「色に詳しくない人でも実践しやすい配色の考え方」を二つ紹介します。まず一つ目は、自然界の色の組み合わせに学ぶ方法です。
例えば、青みの強いローズピンクの花には青みがかった緑の葉が、サーモンピンクのような温かみのある花には黄色みのある葉がついています。こうした自然が生み出す配色は、人間にとって違和感がありません。空間を柔らかく、心地よいものにしてくれます。人工的な組み合わせよりも自然な色合いは見た目に優しく、まねることで居心地の良い配色に近づけるのです。
もう一つは「すてきだ」と思った建物や写真を観察し、その理由を言葉にする方法です。ただまねるのではなく、「なぜそう感じたのか」を考えることで、配色の応用力が高まります。

自然の色合いは居心地の良い空間をつくる
例えば「落ち着いている」と感じたのは、ベージュやグレーなど控えめな色による効果かもしれません。「高級感がある」と思ったのなら、暗めの色使いや素材の質感が影響している可能性があります。理由を言葉にできるようになると、色彩感覚にも自信がつき、見る目も育っていきます。
色は物件の大切な要素
これまで伝えてきたように、色は見た目に関わるだけのものではありません。立地やターゲットのほか、心理的な効果に合わせて色を選ぶことで、人の感情や行動に働きかける空間づくりに役立つ大切なもの。「何となくいい」と感じる物件には、きちんとした理由があります。その一つが色なのです。
色を見る目を育てるのに、特別なセンスは必要ありません。観察と分析を重ねることで感覚が磨かれ、結果的に物件の魅力や価値も高まっていきます。
この1年、色という切り口から不動産経営のヒントを届けてきました。色に正解はありませんが「選ぶ理由」がある配色は、必ず人に伝わります。これからも、色を通じて物件の魅力を育てる楽しさを感じてもらえたらと思います。
またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。ありがとうございました。
眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。
(2025年 12月号掲載)






