再エネ利用で賃貸住宅に新たな付加価値
入居者の電気代を割安にアプリで消費電力も可視化
ファイバーゲート(札幌市)
金子尚常務取締役
インターネット通信事業を手がけるファイバーゲート(札幌市)は、2021年より再生可能エネルギー事業を開始した。
事業の一環となる取り組みが、賃貸住宅の屋上に太陽光パネルを設置し、発電した電気を入居者に割安で提供するというもの。日中に発電した電気の余剰分を蓄電池にためることで、夜間や災害時、停電時も電力供給が可能だ。入居者の月々の電気料金を抑え、二酸化炭素(CO ²)を軽減する物件として、これまでの賃貸住宅にない付加価値を提供する。
▲屋上の太陽光パネルで発電した電気を入居者に供給する
入居者には「FGでんき」というサービス名称で電気を提供。基本使用料金は200kWh(キロワットアワー)までが月額2200円、超過分は1kWhあたり7円(時期により変動、いずれも税込み)に設定している。同社が低圧電力を一括契約しており、普段は太陽光発電で賄いながら、不足分を電力会社から調達する。
専用アプリを使用すれば、入居者自身が日々の電気使用量を確認できるため、電気代の節約にもつながりやすい。
ファイバーゲートは2022年3月、埼玉県川口市に賃貸マンションを建設し、この仕組みの実証実験を行ってきた。マンションに住む単身、ファミリー全12世帯のうち、半数以上が基本料金内の電力使用量に収まる結果となった。
マンションには再エネを活用した電力供給のほか、無料ネットおよびIoT機器、エントランスの顔認証システム、スマートロックを完備。充実した設備により、近隣相場より1万円高い家賃設定にもかかわらず満室を維持している。
金子尚常務取締役は「これまではネット設備そのものの導入を提案してきたが、それだけでは物件の差別化が難しくなってきている。今回の仕組みを構築したことで、付加価値商材としてIoTや再エネ設備の導入を推進し、それらの運用のためにネットのインフラが必要になる、という提案の仕方に変えている」と話す。今後、「ペロブスカイト太陽電池」のような軽量・薄型の太陽電池が普及すれば、さらに導入を検討しやすくなる。
東京都では現在、太陽光パネルと架台、蓄電池に対して補助金が出ている。27年までに申し込み、28年中に竣工する物件が対象。既存物件の場合、屋根の防水加工の代金についても別途補助がある。同社は、東京都を足掛かりに全国展開を目指す方針だ。
▲月間の電気使用量がわかるアプリを提供
(2024年6月号掲載)
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