退去予定だった入居者が契約更新 確かな手応え感じたリノベの魅力

賃貸経営入居者との関係づくり

退去予定だった入居者が契約更新
確かな手応え感じたリノベの魅力

森野裕博オーナー(61)
(静岡県富士市)

 森野裕博オーナー(静岡県富士市)が同市に所有する「ハイカムール新富士」は、築29年。JR東海道新幹線新富士駅富士山口を出て徒歩6分とアクセスは抜群だが、広さ50・2㎡で2DKの、昔ながらの団地のような間取りだった。

ハイカムール新富士の外観

 その物件に、2011年7月から国立研究所勤務の夫婦が住んでいた。しかし「10年以上住んだので、環境を変えたい」と連絡があり、22年秋に引っ越す予定だった。ところが偶然、夫婦の住む隣の部屋で行ったリノベーションの内覧会を見た2人は、室内の変化に驚く。新築同然のように美しくなっていて、賃料も駐車場代込みで8万円台と周辺のほかの物件より安かったからだ。

リノベ後のリビングルーム

 森野オーナーは、入居者が退去するたびに室内をスケルトンにし、1LDKまたは2LDKの洗練されたデザインにリノベしている。夫婦が内覧したのも、そのうちの1戸だった。結局その夫婦は退去するのをやめ、12月に隣の部屋に引っ越した。現在も居住中だ。「リノベには1室400万円かけていますが、それだけの価値があると気付かせてくれた出来事でした。もちろんその夫婦が住んでいた部屋も、すぐにリノベしました」と話す森野オーナー。ほかの賃貸物件との差をより感じてもらえるよう、寝室にプロジェクターを導入したり、仲介を委託している不動産会社の女性社員の意見を聞き、女性が好む物件づくりをしたりしている。

 また、自身が元消防職員であることから、防火管理の面でもしっかりした物件を目指している。水回りなども不具合が気になったら、積極的に修理・交換しているという。
 徹底して入居者目線に立った賃貸経営を心がけてきた森野オーナーの夢は、LGBTQ+(性的少数者)の人たちが気兼ねなく、容易に入居できる物件を造ることだ。
「富士市は富士市男女共同参画条例(平成16年富士市条例第13号)の理念に基づき、性の多様性に関する取り組みを進めています。その理念を具現化した賃貸物件を1件でも造ることができたらと思っています」(森野オーナー)


[プロフィール]
もりの・よしひろ
1962年、静岡県富士市生まれ。富士市消防本部を退職後、JR静岡駅防災センターに勤務。消防本部在職中に賃貸不動産経営管理士の資格を取得し、母親から賃貸不動産の経営管理を任される。現在13棟90戸を所有し、積水ハウス不動産中部と共に管理・運営を行っている。

(2024年3月号掲載)

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