入居者との思い出:西馬込の築古マンション

賃貸経営入居者との関係づくり

西馬込の街と築古マンションを故郷のように愛する入居者たち

 文字洋介オーナー(東京都大田区)は東京都大田区西馬込にマンション4棟、計65戸を所有し、自主管理している。コンセプトは「顔の見える大家さん」だ。

 入居時には必ず入居者と直接顔を合わせ、ごみの出し方の説明をしたり、西馬込近辺の店の情報が書かれた紙を渡したりしている。さらにマンション内では「お元気ですか」「変わりはないですか」と必ず声をかけている。

文字洋介オーナー(48)東京都大田区

[プロフィール]
もじ・ようすけ
1976年、大阪市生まれ。新卒で通信販売会社に就職し、職場で妻と出会う。賃貸事業を営んでいた義父の病を機に退職。東京へ移住し、賃貸事業に参画する。義父の死去に伴い事業を引き継ぎ、2017年から専業家主となる。東京都大田区西馬込にマンション4棟65戸を所有。

▲︎西馬込のマンションは築48年とは思えないほどメンテナンスが行き届いている

 4棟のうち1棟は、築48年の大型マンションだ。そこに9年以上住むA氏一家がいる。A氏の子どもたちは文字オーナーの子どもと年が近いこともあり、よく話をするようになった。マンションの近くにある文字オーナーの自宅でのバーベキューに一家を誘うなどして、自然と交流を深めていった。

「Aさん夫妻から、『何度も家を買おうか、引っ越そうかと思ったけれど、マンションも西馬込も気に入っていて、ここより良いところがない』と言われます。そして、住み続けてくれています」と話す文字オーナー。

 A氏一家以外にも、同マンションで生まれ育ち巣立った後、結婚して夫婦で再び戻ってきた入居者や、30年以上住み続けている入居者もいる。

 入居者の満足度の高さを支えているのは、文字オーナーのたゆまぬ努力と人柄だ。例えば、新型コロナウイルス下では在宅する人が多くなったため、花壇の手入れやペンキ塗りなど、家主の存在が目につきやすい仕事をより積極的にするようにした。マンション周辺を見て回るようにすることで、何かあったら入居者が気軽に自分に声をかけられるようにとの配慮からだ。また、メンテナンスにも余念がなく、不具合の連絡があれば、即対応している。

 税理士からは、「こんなにきちんと管理、経営していて、入居者との関係も良好な家主は見たことがありません」と言われたという。
「西馬込は妻が生まれ育った地ですが、多くの入居者にとっても離れ難い場所なのです。この街と、うちの物件を故郷のように思ってくれている人がたくさんいるのは、家主として本当にうれしいこと。これからも心を通わせられる経営をしていきたいです」(文字オーナー)

(2024年8月号掲載)

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