【連載】海外各都市の不動産投資:アメリカ・オースティン:9月号

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アメリカ・オースティンの不動産事情

区分多いリベラルな州都

 米国で経済発展が著しいテキサス州は人口3000万人を超え、カリフォルニア州に次ぐ全米第2位の州です。テキサス州は広大で、面積は日本の2倍近くありますが、州の人口の約7割は、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、オースティンの四大都市圏に集中しています。

 今回紹介するオースティンはテキサス州の州都で、都市圏人口は約240万人。州内で異彩を放つ、ユニークな街です。

◦保守的なテキサス州では珍しくリベラル色が強い

◦一戸建てが一般的なテキサス州の中で、区分マンションに住む人が多い

 現在のオースティンはⅠT産業の中心地として急発展を遂げています。1980年代に成長した半導体産業をはじめ、2010年代にはカリフォルニア州などの西海岸からIT大手の進出が目覚ましく、今ではグーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、メタ、テスラ、エヌビディア、IBMなど、多くのグローバル企業が拠点を置いています。優秀なIT人材を輩出するテキサス州立大学に、ベンチャーキャピタルも多数存在。シリコンバレーを思わせる同市は、今や「シリコンヒルズ」と呼ばれています。

不動産価格は下落に転じる

 同市にはテキサス州では珍しい市電が走ります。西海岸風の壁画アートの多いオースティン中心地でアパート住まいを好む若者や、郊外ニュータウン開発の成功例として名高い「ザ・ドメイン」に暮らすファミリーが大いに増えました。

▲オースティン市街地 

 テキサス州の魅力は、生活コストの安さです。住宅価格はカリフォルニア州の約半分、物価も割安ですが、オースティンに関しては、新型コロナウイルス下で不動産価格が急上昇し、安いとはいえなくなりました。

 同市不動産価格の中間値は、20年3月の40万3000ドルから、22年6月には66万4000ドルへ急上昇。その後インフレと高金利時代が始まり、上がりすぎた不動産価格は54万2000ドルまで調整され、まだ下げ止まっていません。

 リベラルな都市であるがゆえにハイウエー建設に消極的だった同市では、人口が集中したことによる深刻な交通渋滞が社会課題となっています。同じ州内でダラスやヒューストンの不動産価格が下げ止まった今、オースティンの不動産価格がいつ底を打つのか、目が離せません。

アジア太平洋 大家の会
代表 鈴木 学

PROFILE:海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。

(2024年9月号掲載)
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