ベトナム・ホーチミンの不動産事情
中心部に近いほど高価格
アジアで新興工業国としてのポテンシャルと期待値が大きい国、ベトナム。同国の首都は北部のハノイですが、南部の都市ホーチミン(旧名サイゴン)が都市圏人口でハノイを大きく上回り、外資系企業も多く、経済面ではハノイを圧倒しています。
ホーチミンの都市圏人口は約1100万人で、東南アジア有数の巨大都市にもかかわらず、いまだ近代的な都市交通システムが存在していません。ほとんどの住民はバイクで移動しており、片側3車線の幹線道路がバイクで埋まる光景は壮観です。
そうした中、同市で日本企業が建設する地下鉄「メトロ1号線」の開業に大きな期待が寄せられています。都心部と北東部郊外を結ぶ、全長約20㎞の鉄道路線はほぼ完成しており、開業間近とされています。
メトロ開通前の同市は、不動産投資の面では狙いが絞りやすい都市です。「ホーチミン1区」という圧倒的な都心エリアがあり、1区からの時間と距離で不動産価値が概ね決まるからです。1区から比較的近い大型コンドミニアムの「サイゴンスカイガーデン」「ビンホームズ・ゴールデンリバー」「ビンホームズ・セントラルパーク」「マステリタオディエン」などは、外国人ビジネスパーソンの賃貸需要が十分あります。中古売買も盛んで、1㎡あたりの相場が確立しています。
例えば、セントラルパークの築6~8年の中古住戸の流通価格は1㎡あたり3000~3500米ドル(坪単価155万~180万円)、賃貸なら月額賃料が1㎡あたり10~13米ドルが相場で、利回りは4~4・5%くらいです。都心に近いほど相場価格が上がり、利回りが下がるというのは東京と似ています。
▲総戸数1万戸の超大型物件、ビンホームズ・セントラルパーク
建物は外国人も所有可能
ベトナムにおける外国人の不動産所有は、実質的に2015年に解禁されています。同年7月に改正された住宅法により、外国人がコンドミニアム総戸数の30%を所有できるようになりました。不動産所有権の期間は50年で、1回限り追加で50年間の延長(最大で100年間)が可能です。土地の所有はできません。また、ベトナムで中古物件を買う場合は、外国人所有のものしか買えません。ベトナムから国外への送金も、現時点ではある程度の規制があります。
とはいえ、2050年に先進国入りを目指すベトナムへの期待値は大きく、同市の交通ネットワークが整備されれば、駅近の不動産価値も高まるでしょう。それに加えてベトナム人の不動産所有意欲は大変高く、現時点でバンコクより安いホーチミンの不動産価格は伸びしろが大きいといえます。
PROFILE
アジア太平洋 大家の会
代表 鈴木 学
海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2024年10月号掲載)
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