8月6〜7日の2日間、「東京ビッグサイト」で開催された「賃貸住宅フェアin東京」から、セミナーレポートとして3つの講座をダイジェストとして紹介します。
今回はライフコア(新潟市)代表取締役石塚恭章氏、フル・プラス(大阪市)資産形成・土地建物利活用 統括湯淺純一氏、日栄交通(さいたま市)常務取締役清水雄一郎氏のそれぞれの講座3本です。
セミナーテーマ
事業承継&相続 ~10億円の資産を受け継いだ方法
■講師
ライフコア(新潟市)代表取締役 石塚恭章氏
相続前に公正証書遺言を作成
相続の対策について、自分の実体験を基に話をする。相続対策には、相続税対策、納税対策、遺産分割対策の三つがあるが、ほとんどの人は最初の二つを思い浮かべると思うので、これらを説明したい。
なお実際に相続時に課税されるのは全体の7%程度とのことだが、相続が発生すると6~7割の人がきょうだいや親族同士で争いになるそうだ。私に資産を残した父自身が、相続において家族との骨肉の争いを経験している。結果的にそれなりの財を手にしたが、父はきょうだいとは絶縁状態となってしまった。このためか、父は自分の資産を残すにあたって争いが生じないよう、しっかりと対策を行った。
それは、あらかじめ公正証書遺言を残しておくということだ。公証人に依頼する必要があるため多少のお金がかかるが、その効果は絶大で、私自身も遠からず公正証書遺言を残そうと思っている。自分で書くためお金がかからない自筆証書遺言というものもあるが、こちらは検認手続きが必要で、この手続きにお金がかかってしまう。さらに素人が作成するものだから不備が出る恐れがあり、不備がある部分は無効となってしまうので、おすすめできない。
駐車場を造る費用借りて 課税対象額を小さくし節税
次に、実際に行った相続対策について説明する。まず相続税対策。相続時の節税の手段として有効とされているものに、「小規模宅地の評価減の特例」というものがある。この特例を使うと、節税効果は絶大だが、納税資金を用意しなければならない。それよりも、私は自宅を取り壊して駐車場として運用することにした。メリットとしては、駐車場を造る際の費用を借り入れると、相続発生時にその金額をマイナスの資産として課税対象の総額から引くことができる。借入金があれば、相続額の圧縮につながるわけだ。
続いて納税対策の話をすると、私と父は13年前に将来を見据えて不動産経営を行う法人を設立している。相続税を納めるために父の不動産を現金化しなければならないが、父の不動産を自分の会社で買い上げることで、容易に現金を準備できた。
公正証書遺言だけで 相続手続きを進められる
もう一つ相続時に発生する問題として、遺品の整理についても話したい。父は30年分におよぶ通帳や40個の印鑑など、重要と思われるものをたくさん保管していた。しかし、実際に相続をするにあたっては、一つ一つ必要かどうか確認する手間が増えるだけだった。実は公正証書遺言の正本があれば、実印や権利書といったものは不要だったのだ。金融機関などに事情を説明し、公正証書遺言の正本を提示すれば手続きを進めることができた。改めて重要なのは、公正証書遺言書を作るということになる。
遺品のうち処分に困ったものとして、父が趣味として集めていた刀や掛け軸などの骨董品があった。すべて捨ててしまおうとしたが、資産価値がある可能性も無視できないため、査定のうえ買い取ってもらい、税理士を通して税務申告を行った。
ライフコア(新潟市)代表取締役 石塚恭章氏
セミナーテーマ
空室の新しい生かし方 ~きくらげ&発芽にんにくを栽培中
■講師
フル・プラス(大阪市)資産形成・土地建物利活用 統括 湯淺純一氏
日栄交通(さいたま市)常務取締役 清水雄一郎氏
空き家を活用して農作物を栽培
発芽にんにくを栽培 収益は年間800万円
フル・プラス 湯淺純一氏
当社は、空き家をどう活用するかを掘り下げながら不動産業、建築事業を行う会社だ。地方や過疎地などは空き家の利用や売却が難しく、住宅以外の使い方を見いだす必要がある。
情報を集めている中で、ある不動産会社が発芽にんにくを古い空き家で栽培しているという話があった。発芽にんにくは栽培が簡単で、栄養がある。さらに、にんにく特有の臭いも抑えられるため人気が高まっているという。これはいいと思い、ぜひ教えを乞いたいとお願いした。
ノウハウを得て、大阪市東淀川区にある家賃4万円程度のアパートの空室で始めてみた。発芽にんにくの栽培は、棚を置いて水を入れたペットボトルを並べて貼り付け、そこでむいたにんにくを育てるだけだ。後は空調を入れて室温を22~23度に保ち、サーキュレーターで空気を循環させる。おおむね1~2週間程度、時期がよければ3~4日で商品になる。初期投資は約40万円ほどだった。育った発芽にんにくは、一つの袋に6~7株ほど詰め、400円弱で販売した。取引先は、道の駅のほか地元のスーパーマーケット、飲食店などだ。
ある程度の手間はかかるが、家賃収入が月4万円の空室から生まれた収益は年800万円ほど。原価は約18%程度、人を雇ったとして、材料費、人件費を引いても利益が出る。
フル・プラス(大阪市)資産形成・土地建物利活用 統括 湯淺純一氏
ビニールハウスより格安 空き家できくらげ育てる
日栄交通 清水雄一郎氏
当社は空き家を利用してきくらげの栽培をしている。本来はタクシー会社を経営しているが、2020年の新型コロナウイルス禍により会社の収益が激減し、何かできないかと社員からアイデアを募って出てきたのがきくらげの栽培だった。
きくらげは栄養価が高く、豊富に含まれるビタミンDは免疫力を高めるという効用があるため、感染症の流行下でぴったりの商品だと思えた。
これはビジネスとして成り立つと考え、早速通販できくらげの菌床を10個ほど購入して栽培を始めてみた。需要を調べるため、できたものをフリマアプリの「メルカリ」を使って販売したところ、すぐに売れ、購入者が「また欲しい」とメッセージをくれた。これで自信を持ち、きくらげの栽培を拡大することにした。
翌21年、社内の空き地にビニールハウスを建て、約400個の菌床を置いて本格的に販売を開始。メディアに取り上げられたこともあって、売り切れが続いて予約者は収穫待ちという状態になった。
きくらげは冬場の栽培が難しい。ビニールハウスに暖房を入れてみたが、必要な温度にならなかった。断熱性が高い建物を使って栽培したいと考えていたところ、空き家を使えば水と電気が確保できると思い立った。断熱性の高いビニールハウスを建てるより格段に安く済むし、今後増えるといわれている空き家の活用法にもなる。そこで、22年に埼玉県桶川市の築古の空き家を格安で購入し、ほぼ自力でリフォームして栽培場にした。
日栄交通(さいたま市)
常務取締役 清水雄一郎氏
(2024年11月号掲載)
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