【連載】パリの賃貸不動産事情:第10回

賃貸経営賃貸管理

賃貸物件でのトラブル実体験

 ボンジュール、坂田夏水です。今回は私が借りている賃貸住宅で起きたトラブルの話です。
 築260年以上経過した建物のため、問題は常に起こります。風の強い日に外壁が剥がれて落ちることは珍しいことではありません。建物内部では、大雨の日に雨漏りがあっても仕方がないものですし、さまざまな問題が発生します。

▲念願の新しい給湯器と共に記念撮影

バカンス中の対応は期待薄

 私が住んでいる建物は、一棟まるごとオーナーが所有しているため、物件の管理をしている会社が一括で修理やトラブルへの対応をしてくれます。日本と大きく違うのは、人的問題と工事ミスが起こりやすいというところでしょう。
 2023年夏に、お風呂のお湯が出なくなりました。慌てて管理会社に連絡しましたが、バカンス期間中だったので電話に出てくれません。
 そのため、オーナーに直接電話をしました。もちろん、オーナーもバカンスでパリの家におらず電話に出ません。仮にオーナーの携帯電話にかけてつながっても、管理会社に連絡をするしかないと言われますから諦めました。
 各所にメールやメッセージを残して数日が経過したとき、建物の給排水工事の専任の職人が中庭にいるのを発見しました。
 私たちはチャンスとばかりに直接職人に直談判。家に来てもらって給湯器のチェックをお願いしました。すると給湯器の使用開始後10年以上たっており、故障しているとのことでした。
 緊急の対応として、新しい給湯器に取り換えてもらって解決しました。10年以上使われてきた古い給湯器は、入居者が入れ替わるときに新しいものに替えるべきだと思いますが、壊れてから直そうというオーナーの意向なのでしょう、「フランスあるある」です。私の知人で、1カ月お湯が出なかったという人もいます。

▲壊れた大きな給湯器を運び出す

水漏れ解決まで半年以上

 もう一つ。私の住宅は4階ですが、2階に住んでいる人から直接相談がありました。3カ月前から部屋の中に水漏れがあって、管理会社に相談しても解決しない、カビが発生して本当に困っている、と。「私たちの家の中に水漏れは確認できません。3階はどうですか」と返事をしたところ、「3階の住人は現在長期休暇中で連絡してもつながらない」とのこと。
 管理会社は大きな問題がない限り各部屋に立ち会いなしでは入らないのですが、その後2階の人の堪忍袋の緒が切れて激怒。建物に住み込んでいる管理人が鍵を開けて、中を確認することになりました。
 その結果、3階にも水漏れの跡があり、原因は私たちが住んでいる4階にあるのではないかと大調査。直接相談されてからここまでさらに3カ月かかっており、2階で問題が発生してから半年が経過していました。
 最終的に、水漏れの原因は私たちの部屋のキッチンにあることがわかりました。水栓をつなぐ金物が劣化していたのです。職人によると、私たちが住み始める前の内装工事で、オーナーが減額調整し給排水工事を別会社に外注したためだそうです。フランス語が通じない移民の職人がたくさんいて、意思疎通ができずに工事に不備があったという可能性もあります。
 最初から4階できちんと調査をしておけば、半年も水漏れによるカビを我慢することもなかった2階の住人が気の毒です。
 こんな感じで暮らしているので、対応時間が長くすぐに解決してくれる日本の管理会社は、なんて素晴らしいのかと再認識しました。

 

建材紹介

パリのカフェの床は、どんな模様のタイルが人気だと思いますか。さまざまな種類があるものの、長年愛されて古くから変わらないデザインのものが多く見られます。例えば、このヘキサゴンタイルを使用した床ですが、白と黒の六角形のタイルを並べて模様や文字を描いています。インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」では、インテリア用の床や壁に使う特別なタイルをそろえています。

 

夏水組(東京都武蔵野市)
坂田夏水 代表

【プロフィール】
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランドウ)」の運営を開始、現在パリ在住。

(2025年2月号掲載)

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