話題のスポット:ビル上階を複合施設へ

賃貸経営地域活性

ビル上階をシェアハウスのある複合施設に
「まちの実験室」として交流を生み出す

 シェアハウスのほか、カフェ・バーやレンタルスペースなどを備えた複合施設「Neriba(ネリバ 以下、ネリバ)。2020年1月、東京都練馬区に誕生して以来、多様な人々をつなぎ、面白い化学反応を生み出す交流拠点となっている。

▲シェアハウスの入居者が日替わり店長としてバーに立つこともある

スペリアル(東京都練馬区)
荻野智希社長(37)

 ビルの4階まで階段を上がり、少し息を弾ませながらバーの扉を開けると、ピザを片手に会話を楽しむ人たちがいる。日替わり店長がビーガンピザを提供する「ピザナイト」が開催されているさなかだった。

 このバーがあるのは、都営大江戸線練馬駅から歩いて3分ほどの場所にあるネリバ。地上5階地下1階建てビルの2フロアをリノベーションした施設だ。4階には完全予約制のレンタルスペースのほかに、コワーキングスペースやシェアキッチンとしても使えるカフェ・バーを、5階には3室の専有部を持つシェアハウスを設けている。

活用しかねていたビルの上階地域の交流拠点としてリノベ

 ネリバを手がけたのは、遊休不動産・空き家の利活用や企画コンサルティングなどを行うスペリアル(東京都練馬区)の荻野智希社長だ。海外留学中に滞在したシェアハウスやゲストハウスでの経験から「多様性のある場づくりがしたい」と思い不動産業界に飛び込んだという。

 ネリバが入っている築50年の商業ビルとの出合いは、不動産ベンチャー時代の顧客から、新規取得した同物件の活用方法を相談されたのがきっかけ。前オーナーの所有中は、ビルの地下1~3階をテナント、4〜5階にある全3室をオーナー自身の居住スペースとして使用していた。現オーナーは当初、その3室を独立した専有部にし、居住用として貸し出そうと考えた。しかし、各部屋の水回りが不足しているため、改修に1000万円以上かかることが発覚。投資に二の足を踏んでいた。

▲ワークショップ形式の「コラージュバー」。雑誌やチラシを切り抜いて即興で作品を作る 

 そこで手を挙げたのが、場づくり運営を通して関わる地域を面白くしたいと考える荻野社長だった。5階はリモート・パラレルワーカーを支援する居住スペース、4階は地域に開かれた事業スペースとして複合的な空間をプランニング。この2フロアを借り上げて、DIYをしながら当初の半分ほどの予算でリノベを成功させた。

▲シェアハウス501A号室の内観

人や地域に関わる余白を用意小さな一歩を踏み出す場に

 ネリバのコンセプトは「ご近所から暮らしが楽しくなる実験場」。20~30代がメイン利用者だ。シェアハウスの運営で安定収益を確保しつつ、コミュニティースペースの役割を担うバーでは日替わり店長とテーマ企画という二つの軸で、人々の交流を生み出す実験がされている。

 多様な背景を持つ日替わり店長に会いに行ったり、興味のあるテーマのイベントに参加したり。1人で訪れても、バーに居合わせた人たちと自然に会話が始まる。「このような世界観はほかの飲食店にはあまりないと思います。4階まで階段というハードルを超えてきたからこその連帯感が生まれるのかもしれません」(荻野社長)

 「『関わりしろ』をたくさんつくってある」と荻野社長が話すように、ネリバの運営に関わる第一歩として、店長の補助業務やイベントを手伝う「ゆるサポーター制度」がある。また街の中にある面白い店を「はしご酒」のように回遊する企画やごみ拾い後にコーヒーを飲みながら交流をする活動も実施。ネリバだけでなく地域との関わりしろも大切にしている。

 

 「ネリバの認知度を上げて、日替わり店長やシェアキッチンの利用者をより増やしていきたい。そこからまちで活動するプレーヤーが多く現れればうれしいです」(荻野社長)。一つの点と点がつながり、力強い線を地域に描く。リアルな交流の場として、ネリバはコミュニティー運営をさらに強化していく。

(2025年 4月号掲載)

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