電子版:不動産再生学講座レポート第2講② by次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー

賃貸経営不動産再生
  • HOME
  • 賃貸経営
  • 不動産再生
  • 電子版:不動産再生学講座レポート第2講② by次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー

第1部:次世代不動産経営のための不動産学を実学から学ぼう
第2講『人工知能による経営革新から始まる新時代』②

電子版:不動産再生学講座レポート第2講①に続き、九州産業大学建築都市工学部で行われた「不動産再生学」と題した寄附講座から清田陽司氏の講義をレポートする。

麗澤大学工学部 教授 / 株式会社FiveVai 取締役CDO / 株式会社LIFULL 主席研究員 清田陽司氏

空き家問題と不動産と介護の関係

いくつかのフロンティアについて少しだけ話します。空き家問題とビッグデータについてです。空き家問題は非常に深刻な問題で、私も身近な話です。というのも、父方の実家が空きになっています。父が所有者ですが、介護を受けていて行けない状態です。市役所からクレームが来ており、対応しなければなりません。

空き家問題は社会的な問題を引き起こします。それにより治安や環境の悪化、産業経済が衰退し人口減少が加速します。しかし、空き家問題の正確な全貌は誰も知らないのが現状です。空き家の定義が曖昧で、住民票が置かれていれば空き家ではないかもしれませんが、実際には住んでいないこともあります。一方で、民泊で活用されている物件は空き家とは言えないかもしれません。

ビッグデータを使って空き家の正確な状況を把握する取り組みが必要です。物件サイトに募集されている物件は住んでいないことが分かりますが、例えば水道メーターや電力メーターなどのデータも活用できれば、その家に人が住んでいるかどうかが分かるのではないでしょうか。また、最近の衛星画像は非常に高画質なので、上空からの写真を使って地域や集落の人々の活動状況を把握することができるかもしれません。

こうしたビッグデータを駆使して、空き家の全貌を捉える取り組みが進められています。具体的には、ライフル、東京大学、福島県磐梯町が共同研究で、水道使用量を利用して空き家を発見するモデルを作ろうとしている取り組みです。例えば、水道使用量のデータから空き家と判定された物件と、目視で空き家と判定された物件の一致度を調べることで、目視では分からない空き家を水道メーターの情報から発見することができます。

次に、不動産と介護の関係についてお話しします。私自身も父が要介護1なので他人事ではありません。ライフルでも「ライフル介護」という介護施設を探すポータルサイトのサービスを運営しており、そのコールセンターのデータをAIで分析する研究を九州工業大学の井上先生と一緒に行いました。介護施設探しは非常に複雑で、普通の物件探しとは異なり、入居者本人ではなくその家族が相談に来ることが多いです。

データ分析から、介護施設が決まらない原因が見えてきました。例えば、入居者が受けている医療サービスによって対応できる施設が限られることや、予算の問題があります。不動産取引時にはリセールバリューを意識する必要がありますが、リセールバリューがほとんどない物件も多く、そうした物件では介護施設の入居費用を賄うことが難しいです。また、家族内での意見の対立も多く、話が進まないことがあります。こうした問題はビッグデータから見えてきており、不動産と介護は密接な関係を持っています。不動産、医療、介護、保険、金融、都市地域はお互いに密接な関係を持っていますが、業界はそれぞれ別であり、現状では連携がほとんど考慮されていません。これが一つのフロンティアとしてあります。

フロンティア課題に取り組むための重要なポイント

最後に、フロンティア課題に取り組むうえで大切なことを2つお伝えします。

1つは、世の中の変化の大きな流れを大まかなイメージとして持つことです。AIが働き方や世界の仕組みを大きく変えているので、その流れを掴んだり、実際に使ってみたりすることが重要です。また、一生学び続ける姿勢を持つことも大切です。

もう1つは、異なる分野の人々とコラボレーションすることです。分野によって正しさは異なりますが、その違いを受け入れて協力することが必要です。これができる人は意外と少ないですが、フロンティア課題に取り組むためには重要です。学ぶ仲間を持つことも大切です。AIのことを勉強しようと思えばYouTubeなどで学べますが、対話を通じて知見を深めることが重要なのです。学びの仲間を持つことで、より深い学びが得られます。

(2025年5月公開)
関連記事↓
電子版:不動産再生学講座レポート第2講① by次世代不動産経営オーナー井戸端セミナー

この記事の続きを閲覧するには
会員登録が必要です

無料会員登録をする

ログインはこちらから

一覧に戻る

購読料金プランについて

アクセスランキング

≫ 一覧はこちら