ローリスクハイリターン不動産投資のキーワードはSDGs

賃貸経営トレンド

Focus~この人に聞く~

新たな付加価値が社会課題を解決
同時に収入の安定化につなげる

 SDGs不動産・都市研究所(東京都新宿区)では、SDGsの視点を持った不動産経営者の育成を目的とした「SDGs不動産プランナー養成講座」を開講、2期目がスタートした。自身も500戸超の賃貸物件を所有する同研究所の根岸正州所長によると、今後の賃貸経営で、ローリスクハイリターンを得るためのキーワードがSDGsだという。

SDGs不動産・都市研究所(東京都新宿区)
根岸正州所長(46)


――不動産オーナーがSDGsを学ぶ意図はどこにありますか。

 「住」を提供する不動産事業は環境や社会への影響が大きいと考えます。一方で、2024年に帝国データバンク(東京都港区)が発表した調査からは、不動産業界が他業種に比べてSDGsへの取り組みが遅れていることが見て取れます。


――賃貸事業におけるSDGsは、物件でボランティアを行うような印象があります。

 SDGsはCSR(企業の社会的責任)ではありません。ボランティアではなく、むしろ「SDGsは実はもうかる」というのが当社の打ち出すコンセプトです。事業を通じて不動産オーナーが収益を得ることで初めて持続可能な社会貢献ができます。社会への貢献に対する見返りがあるからこそ続けられるともいえます。


――具体的にはどういう賃貸事業がSDGsの視点を持つのでしょうか。

 例えば、新型コロナ禍以降ニーズが高まっている防音賃貸物件を手がけることは、一つのSDGsといえるでしょう。あるいは、所有物件の一部をグループホームとする、または東京都心の待機児童の多いエリアで保育園を誘致するなどが考えられます。要は、新たな価値を見つけ、そこに投資することがSDGsの視点を持った不動産経営ということです。


――自身の賃貸経営に付加価値をつけるイメージですね。

 日本では少子化が進む中でもどんどん新築の賃貸住宅が建てられています。完全な供給過剰状態であれば、空室発生リスクは高まり、賃料収入というリターンは下がります。これは経済学的には利益がゼロに向かっているということです。それであれば供給が不足しているところに新しい価値を提供しなければなりません。この考え方こそがSDGs、つまり持続可能な考え方なのです。


――賃貸物件に新しい価値を与えることは、これからの時代を勝ち残る不動産オーナーになることにつながります。

 さらにその新しい価値への投資が5年、10年といった短いスパンではなく、長期的に事業として成り立つように計画を立てるマインドを持つことが重要でしょう。今の時代、銀行の融資も事業性融資に変わってきているといえます。単純に土地や資産を評価するのではなく、事業性、いわば経営者自身を評価していく。そうした時代にも融資を受け続けられるのがSDGsの視点を持った不動産オーナーだといえます。同講座を通じ、不動産事業のプランニング見直しの機会を提供できればと考えています。(長谷川律佳)

根岸正州所長プロフィール
東京工業大学(現東京科学大学)大学院社会理工学研究科修士課程修了後、野村総合研究所に研究員として入社。専門は非営利組織の経営、企業の社会性戦略(CSR/CSV)、教育・医療・介護・不動産領域のイノベーション、デジタル組織のデザインなど。2023年にSDGs不動産・都市研究所設立、所長就任。


(2025年7月号掲載)

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