独自の条件で物件選び、自社商品を設備として導入

賃貸経営不動産投資

<<本業と不動産経営のシナジーを考える>>
「不動産賃貸で取引先との関係性が強固に」に続き、賃貸住宅9万戸にインターネット回線を提供するレジデンシャルインターネット(東京都港区)の竹内敬人社長に、賃貸経営に対するこだわりとネット事業との相乗効果について聞いた。

「いいね」と思われる物件重視

 同社の保有物件は平均利回りが8%。入居率はいずれも95%超で安定している。「賃貸経営がうまくいくかどうかは物件選びでほとんど決まる」と竹内社長は話す。コロナ禍による相場値下がりというタイミングに恵まれた面もあったが、竹内社長はこれまで一貫して独自の条件を持って物件を探してきたという。その条件とは、まず都内の物件であれば最寄り駅から徒歩7分以内で、敷地の前面道路が幅6m以上であることだ。

 「不動産も人も同じだと思っていて、ほかの人から見て『格好いいね』と思われることが重要です。例えばドライブしている時に所有物件の前で『これ自分の物件』と自慢できる物件です。そうすると『すごい』と言われるでしょ。細くて薄暗い裏道にある木造の古い物件では言われないです。他人の評価は市場の評価ですから人にどう思われるのか、他者の目線を重視しています」(竹内社長)

 一方、都内以外の郊外や地方エリアでは、その土地のエリア特性を重視して購入してきた。八王子市内には賃貸住宅を4棟保有しており、そのうち1棟は駅前だが、残り3棟はバス便立地。一見すると立地条件は良くないように見えるが、実はいずれも大学の徒歩圏にある。しかも地元では誰もが知っている都内唯一の「道の駅」のほか、商業施設や物流倉庫が近くにあり、地元で働く人や通学する学生らが住みやすい物件だ。

 熱海市にある賃貸マンションは、昔、とても人気だったが、バブル崩壊以降落ち込み、最近再び人気が高まっていることからホテルの従業員用の賃貸需要に注目。想定どおり、ほぼ満室だという。

 こうした目線で購入すると、売却時の収益も大きくなるという。最初に購入した浅草橋駅近隣の古いビルは、購入翌年の21年に隣地を購入した事業者に懇願され、売却。購入価格4000万円の2倍の8000万円で売れた。そのほかにもマンションを新築しようと購入した品川区東品川と墨田区菊川の土地は、不動産価格が上昇していたこともあって買い手が現れた後すぐに売却した。

 いずれも売却益は大きく、菊川の物件が5000万円、東品川に至っては5億円にもなったという。山手通りや新大橋通りなどの大通りに面していたことが大きかったようで、竹内社長が設定した「敷地の前面道路が幅6m以上」という独自条件がズバリ的中したものだった。

 竹内社長は大学在学中の21歳で起業し、これまで30年会社経営をしてきた。若い時からほかの経営者と渡り合っていくうちに、魅力を感じる経営者の身なりや経営姿勢を見習ってきたという。その結果、服装やマナーなど相手に「気持ちよく仕事ができると思ってもらえる」基本的なことをまず意識して営業することを重視してきたが、その考え方は賃貸経営においても同じだという。

 「当社では私をはじめ男性社員は全員胸ポケットチーフを身に着けています。不動産も人も相手にどう見られるかが重要だからです」(竹内社長)

物件に自社の新商品を導入

 賃貸住宅を自社で保有することは同社の本業であるネット事業に大きなプラス効果を生んでいるという。竹内社長は自社物件には最新のインターネットカメラをはじめとするIoT関連商品新サービスを導入しているが、こうした物件を同社の主な取引先である建築会社や管理会社にモデルマンションとして見せることができるからだ。つまり、自社所有の物件が新規顧客獲得の営業の場になっている。

 同社がオーナーという立場になることで、取引先の建築会社や管理会社との関係性をより強固なものにできる点もメリットだという。オーナーとしてそれぞれに新築や管理などの仕事を依頼することができるようになったからだ。「バーター取引ができるようになったことは大きいです。日頃のお礼として、取引会社の売り上げになるようにと思って仕事を依頼できます。持ちつ持たれつの関係性です」(竹内社長)

 さらには、経営者として多くの社員を雇ってきた経験を持つ竹内社長にとって、人を動かさずに物件の収益のみで事業が成り立つ不動産賃貸事業を始めたことは、新鮮な体験だった。

 「これまで長年やってきた事業は常に人が動かなければならず、人に依存している部分が大きかったです。その点、不動産は管理会社に任せることができるので助かります。事業にこういう両軸があるのは企業としても安定経営につなげやすいです」(竹内社長)

 一方、オーナーに対しては、13年3月から「The Club(ザ・クラブ)」という不動産オーナー同士の情報交換や懇親の場を提供する会員制クラブを運営する。レジデンシャルインターネットの顧客であるオーナーから「賃貸経営を学ぶ場所」や「オーナー同士が出会う場」を強く求められたことが発足のきっかけだという。25年5月末時点で約300人のオーナーが登録している。不定期開催で毎回約70名が参加するという。

▲同社が運営するオーナー会「The Club」

 「同じオーナーという立場でも話ができるので、より関係性が深まります」(竹内社長)
 同社では今後も、賃貸住宅を増やし本業との相乗効果を高めていくという。

(2025年8月号掲載)
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