売却困難な全国の不動産を1200件引き取り再活用

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売却困難な全国の不動産を1200筆引き取り再活用

不動産を引き継いだものの、活用しにくいケースは少なくない。そんな売却困難な不動産の再活用を目的として設立したのがLandIssues(ランドイシューズ:東京都千代田区)だ。同社は2023年から本格的に事業を展開し、いわゆる「負動産」を約3年で1200筆引き取ってきた。同社の松尾企晴社長は、相続放棄を検討せざるを得ない不動産を、プロの視点で再活用し、新たな価値を生み出すことを目指している。

LandIssues(東京都千代田区)
松尾企晴社長

月100件相談、2割引き取る

 「処分方法が見つからない一見使い道がなさそうな不動産でも再生させることができます」。こう力強く話すのは、LandIssuesの松尾社長だ。

 同社では日本全国の山林、原野、田畑、沼地、宅地、雑種地、別荘地、未接道の土地、私道、土地や建物など、制度上扱いが難しい一部の農地を除いて、あらゆる不動産を引き取っている。しかも共有持ち分も可能だという。

 月に100件の相談があり、そのうち2割はすぐに同社が引き取っている。これまでおよそ1200筆の不動産を引き取り、そのうち約2割が売却済みだという。相続により問題が顕在化するケースが多く、相談全体のうち相続前後のものが8割を占める。そのため、税理士や司法書士からの紹介が多いという。

 土地の引き取り価格は1筆15万円、2筆目以降は追加5万円という明確な基準がある。建物付きの場合は70万円で、リフォームを前提に引き取る。

 相談で多いのが、先祖や親が農業や林業として利用していたが、廃業したことで現在は使っていない山林、バブル期に宅地開発を期待して購入したが、開発されず山林のままの別荘地、地方にある空き家状態の実家で、住む人、使う人が見つからない土地や建物などだ。その中でも目立つのが、かつて「原野商法」により取得した土地の相談だという。地方の未開発地で「将来、新しい開発予定があり、土地値が上がる」というセールストークで購入したものの、実際はそうならずお荷物になっている不動産は少なくないそうだ。

 「売れなくて困っている不動産を引き取って何をするのか、とよく聞かれます。私は、不動産は使い方一つ、見せ方一つで価値は変わると考えています。自然の山や土地でソロキャンプをしたい、秘密基地のような大人の隠れ家をつくりたいとか、二拠点生活を始める前に、田舎暮らしを体験したいなどのニーズをくみ取り、不動産を整備することで、このようなライフスタイルをかなえられます」(松尾社長)

 同社は、空き家ビジネスを手がける企業が敬遠するような物件でも、自治体と連携して新たな価値を創造することに挑戦しており、賃貸事業への進出や、地域活性化への貢献を目指している。

国庫帰属法施行で相談増加

 もともと松尾社長は、不動産相続コンサルティング会社のプロサーチ(同)の社長を務めており、プロサーチでは対応しきれない不動産の処分についてのリソースが必要なため、LandIssuesを独立させた。プロサーチの顧客は資産家が多いのに対し、LandIssuesは相続などで困っているより広範な顧客を対象としている。

 設立したのは、20年。当時は相談も月10件前後だった。士業からの紹介などによる相談で実績を積んできた。転機となったのは23年に相続土地国庫帰属法が施行されたことだった。正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」で、相続または遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たした場合に、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を定めた法律。承認申請と政令で定める額の手数料が必要となる。

 この制度によって、相続した土地の処分を考える人が増えた一方、建物があったり、境界が不明確であったりするなどの要件を満たさない土地を所有している人は、別のサービスを探すようになった。

 今後の展望として、相談件数の増加、活用事例の多様化、そして業界全体の健全化に向けて取り組んでいく予定だ。そのためには「国土交通省との連携によるガイドライン策定の動きや、悪質な引き取り事業者に対する注意喚起が必要です」と松尾社長は語る。

 さらに、売却が難しい不動産に特化した新たなコンサルティング事業の構想も持ちつつ、事業を発展させていく。

 その一つが再生事業だ。第1弾として山梨県北杜市に「秘密基地計画『空(くう)』in(イン)北杜」を8月にオープン。秘密基地のコンセプトは、松尾社長が子どもの頃、こっそりと作った秘密基地だ。そのわくわく感、特別感を大人バージョンにアップデートしたという。宿泊のみならず、イベントや個展開催などのレンタルスペースの使用も可能とした。再生事業を本格的に展開していく予定としている。

 「手放せず困っている人から不動産を引き取って、負担から解放され安心してもらうとともに、不動産の再生を通じて日本を元気にすることを実現していきます」と松尾社長は熱く語った。

(2025年9月号掲載)

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