1年1棟のペースで新規ビルを取得

賃貸経営賃貸管理

<<ビルオーナー物語>>

築古物件を満室経営で売却
1年に1棟のペースで新規ビルを取得

田丸ビル(東京都杉並区)の3代目社長の田丸賢一氏は、東京都杉並区や中野区などでテナントビルや賃貸マンションを経営している。これまで長期保有の築古物件を満室で売却しながら、資産価値の高い物件に組み換えてきた。適切な融資を受けることが経営に必要なことだと考えるからだという。

田丸ビル(東京都杉並区)
田丸賢一社長

 JR中央線荻窪駅から徒歩6分の場所に本社ビルを構える田丸ビルは、現在、杉並区と中野区をメインに6棟のテナントビルと、3棟のテナントと住宅の複合ビル、そして17戸の区分マンションを所有する。

 だが、2016年に田丸社長が就任した時には、同社の所有物件は3棟の自社ビル、2棟の築古賃貸住宅と9戸の区分マンションのみであった。しかも、賃貸住宅は空室を多く抱え、課題が山積していた。

 「レオパレス荻窪第11」はそこまで築古ではなかったものの、ひどいときは8戸中3戸が半年以上も空室の状態だった。そこで田丸社長は外国人の受け入れを推し進めた。その結果、空室は埋まった。その後も、入居者の入れ替わりで多い時は8戸中6戸が外国人入居者の時もあった。

 近辺では外国人が入居できる手頃な物件が少なく「あそこの賃貸物件には外国人も入居ができる」という評判が広がった。それが差別化になったのだ。

 もう1棟の「阿佐谷コーポ」でも外国人入居を促進していった。結果、両方の物件が満室となり、賃貸住宅は安定的に満室経営を続けることができるようになった。
高稼働物件となったところで、田丸社長はこれら二つの物件の売却を決めた。

 「当社は基本的に長期保有を目指しており、2棟についても30年ほど所有しました。今回、外国人を受け入れたことで満室稼働をきっかけに売却。新規物件獲得のための自己資金を得ることができました」(田丸社長)

▲本社の入る第三田丸ビル

売却時の利回りに惑わされず 購入後に賃料アップを目指す

その売却益を元手に、新たな物件を積極的に購入していった。20年以降、5年間で取得したビルの数は6棟。破竹の勢いでの購入だった。

 最初に購入したのは、本社ビルからも近い立地にある「イデアサイトビル」だ。地上5階、地下1階建ての1フロアに1テナントが入るビルで、当時築33年だった。適切に外壁補修工事や防水工事が行われていたため、今後30年は問題なく保有できそうだった点、そして何より格安な賃料で貸し出していた点に注目して購入を決めた。

 例えば、約78㎡の地下1階は購入当時、相場の半額以下で貸し出していた。周辺の物件を見わたしてもかなり低い設定だった。購入後に賃料を適正な価格に上げていけば利回りを上げることができると考えた。

 「実際、地下1階は退去後に賃料を2倍以上にして募集しましたが、即日入居が決まりました。同じく1階も1・8倍まで上げてもすぐに内見が入ったほどです」(田丸社長)

 現在、イデアサイトビルは利回り12%を確保する「優秀な」ビルになっているという。

 21年にはテナントと住居の複合ビルを2棟、22年、23年にもテナントビルを購入した。どのビルも3駅以上が徒歩圏内にあり、広い道路沿いにあるのが特徴だ。

 直近では、25年3月に「ファイン目白TOKYO(トウキョウ)」を購入。1~4階が賃貸住宅、5階がオーナーの自宅だった物件だ。築8年だったが、元オーナーが高齢者向け施設に入るということで売りに出されていた。

 「オーナーの自宅部分をファミリー向け物件として貸し出すことで高い家賃が取れると考えました。JR山手線目白駅周辺は学習院大学ほか、大学が多く、単身者向けの物件がメイン。そのため、希少なファミリー向け物件は人気が出ると確信したのです」(田丸社長)

 この読みは見事に当たり、63㎡の居室を購入時に仲介会社が査定した賃料より4万8000円高く貸し出しても、すぐに入居が決まった。利回りは5%だが、今後は退去の際に賃料を上げながら6%も射程に入るという。資産組み換えの効果もあり、田丸ビルの年間賃料収入は社長就任以降1・65倍になっているという。

■田丸社長が取得した物件(1)

 

(2025年9月号掲載)
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受け継いだ資産を守るための組み換えを実施

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