<<「ペット可」にとどまらない需要が高まる猫物件:1>>
犬猫の飼育頭数逆転から10年
猫可賃貸の需要が高まる
新型コロナウイルス下ではペット需要が高まり、賃貸住宅においてもペットの飼育可能な物件の供給が求められた。中でも、集合住宅で飼いやすい小型犬や猫、その他の小動物の飼育数が増えたと考えられる。
一般社団法人ペットフード協会(東京都千代田区)の調査によると、日本では2014年に犬と猫の飼育頭数が逆転し猫のほうが多くなった。24年の調査では、犬は前年に比べて世帯飼育率が下がった一方で、猫の飼育頭数はコロナ下に引き続き横ばいとなっており、飼育需要の根強さがうかがえる。
こうした中、賃貸住宅においては「ペット可」であっても犬のみ飼育可の場合が非常に多い。ふん尿や爪研ぎなど、犬に比べて設備や躯体への負担が大きいことを心配するオーナーや管理会社が多いためだ。
猫を飼育可能としている物件のオーナーからは、ほか物件との差別化や賃料の上昇につながったという声が聞かれる。いまだ開拓の余地がある市場といえる。本記事では、所有物件を「猫物件」にすることで、周辺物件との差別化や付加価値の向上を実現した事例を集めた。
猫と暮らす物件のポイント
東日本大震災での動物レスキューをきっかけに猫専門の不動産会社を設立。賃貸仲介や猫用リノベーションのコーディネートを始めた一般社団法人CA T’S INN TOKYO(キャッツイントーキョー・東京都板橋区)の藍智子代表は「救助した動物の里親探しをしていると、引き取りたくても住宅事情により飼うことができない人がたくさんいました。保護頭数は犬より猫が多く、猫に特化した賃貸物件の必要性を感じました」と話す。
一般社団法人CAT’S INN TOKYO(東京都板橋区)
藍智子代表

「猫のための部屋は、猫も入居者も喜ぶものを意識してつくります。例えば、天井付近のキャットウオークは『高い場所で落ち着く』習性がある猫を満足させると同時に、飼い主からも猫の動きが観察できると人気です」(藍代表)
心配される爪研ぎに関しては、壁紙の貼り替えを前提に敷金を多く取るなどで対応可能だ。客付けしにくい古い和室を「猫が爪を研ぎ放題」とうたって上から安いカーペットを敷き募集をかけるオーナーもいるという。

※一般社団法人ペットフード協会の発表をもとに地主と家主で作成
(2025年9月号掲載)
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