【特集】継いだアパートを多頭飼育可物件に

賃貸経営空室対策

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受け継いだアパートを猫物件に 多頭飼育可でニーズを獲得

 水野直子オーナー(東京都千代田区)は、東京都清瀬市で猫のみ飼育可のアパートを経営している。
 14年、父親から1棟8戸の木造アパートを相続した水野オーナー。当時で築40年近かったアパートには、高齢の入居者が多く、引き継いですぐに孤独死も発生した。幸い、特殊清掃が発生する事態には至らなかったが、古いアパートの現状に嫌気が差したという。

水野直子オーナー(東京都千代田区)

自分が好きなアパートにする

 知識がないまま相続したアパートのことを「好きになれなかった」と話す水野オーナーだが、前述のアクシデントを経て一念発起。17年から「自分が好きになれる建物にしよう」と考え、アパートの「猫物件」化に取り組んだ。

 既存入居者に対して文書で告知した後、空室にリフォームを施した。猫のための造作として、キャットステップ、キャットウオークのほか、脱走防止柵や猫のトイレを隠すことができるボックスを設置している。

 「もう決めましたよと強気の姿勢で通知したのが良かったのか、既存入居者から反対意見は出ませんでした」(水野オーナー)

 リフォームを終えた物件の写真には、自身で飼育する2頭の猫が実際に使っている様子が写っている。


 水野オーナーの所有するアパートでは、1部屋で3頭までの猫を飼育できる。猫を飼える物件でも1頭のみという規約が多いが、猫好きの水野オーナーは「猫にとっても多頭飼いのほうが良い」と考え、このルールを決めた。猫可の物件自体が少ないうえ、3頭飼える物件は希少性が高い。そのため、一度入居が決まると長期入居になる。周辺相場が5万円前後の中、7万5000円の家賃でも入居付けに苦労することはないという。

トラブル回避のルールは明確

 現在、アパートの8戸中5戸が「猫部屋」となり、11頭の猫が飼育されるまでになった。水野オーナーが中心となって猫を飼う入居者同士の「LINE」グループができ、定期的に飲み会を開催したり、猫関連のイベントに一緒に参加したりするほどの関係を築いている。

 猫に関して非常に寛容に見える水野オーナーだが、入居時のルールは厳格に決めている。

 一例として、入居時の契約書には猫の写真と生年月日を記載させる。ほかにも、共有部に出すときはキャリーバッグに入れる、猫用品の手入れは室内のみで終わらせ、ふん尿はトイレに流さずビニール袋に入れてごみとして出すことをルール化している。

 「猫と人間が快適に暮らすためにはルールを守ることが必要なのです」と話す背景には、猫の保護団体で活動した経験がある。猫の飼育では多頭飼育崩壊が問題になることも多い。実際の現場を見てきた中で、自分のキャパシティーや経済力を超えて猫をため込んでしまう人がトラブルを起こすことを学んだ。

 また猫の避妊も義務付けているが、繁殖により多頭飼育崩壊を起こすことを防ぐほか、猫のマーキング行為や鳴き声によるトラブルを回避する効果もある。 受け継いだアパートを、大好きな猫を軸に「自分が好きな物件」に変えた水野オーナー。猫好きだからこそできる厳格なルール設定が、円滑な猫賃貸の経営につながっている。

 

(2025年9月号掲載)
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